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市川ユウキのGP神戸調整録 
 
text by Yuuki Ichikawa


0.導入


ご無沙汰しております、市川です。今回は8月23日から2日間開催されました”グランプリ神戸”への調整録を綴ろうと思います。

余談ですが前シーズンのプロプレイヤーズクラブ:プラチナレベル獲得を踏まえて、先日BIG MAGICさんとプロスポンサー契約を結ばせて頂きました。
今まで以上にこちらのWebサイトのコラムや企画、及びGPやBMOなどのライブイベントにてお会いする機会が増えるかと思いますので何卒よろしくお願いします。



1.”モダン”フォーマットの印象


■親和の躍進


グランプリ前、一番前評判が高かったのは”親和”でした。




環境トップの爆発力、メイン戦の勝率は圧倒的で、サイド後も相手が対策カードを引かなかったり、先手でブン回りを出来ればそのまま轢ききってしまったり。
元々使用率は高く、PTQでもTOP8の常連みたいなアーキタイプだったのですが、”基本セットマジック2015”にて《アーティファクトの魂込め》が入ったことによって一躍トップメタに。




僕自身、親和デッキはプレイしたことが無いのですが、前々から親和デッキの《物読み》には懐疑的でした。
《羽ばたき飛行機械》や《バネ葉の太鼓》などの賞味期限の短いカードが大量に入っているので、テンポを阻害したり、終盤にカードを2枚引くスペルが対戦してて強く思えなかったからです。

その点、《アーティファクトの魂込め》はそれ自体が強いカードで非常に好感が持てます。
《物読み》で引きたいカードって結局《頭蓋囲い》や《電結の荒廃者》などのパワーカードで、それだったら元々強いカード入れるべき、っていう発想は納得です。

これの採用によって親和の所謂”軽量アーティファクト群しか引けなくて押し切れず負け”みたいな引きムラでの負け方が少なくなりました。
グランプリでは私は一番多いだろうという予想で、”親和に勝てないデッキは持ち込まない”と決めていました。



■BG系の衰退

モダンフォーマットではここ数年”王者”として環境に居座り続けたBG系ですが、BG系愛好家の筆者でも今のメタゲームでは辛いだろうな、という感想でした。




上記の通り親和デッキが隆盛していたので、それに不利なBG系はデッキ構成の変更を余儀なくされました。
タッチ白をして《未練ある魂》を採用したり、サイドに《石のような静寂》を取ったり。
ただ外野の僕から見るとこれくらいで親和に有利が取れるととても思えませんでした。
一番多いと想定される親和に勝てないとなるとどうにも食指が動かず。




また、相性が従来だったらほぼ五分くらいのマッチアップだったトリココントロールなどは《刃の接合者》を採用してBG系の《ヴェールのリリアナ》への耐性を付けていたり、相性が良いマッチアップである青赤双子などはメインに《血染めの月》を採用するリストなども増えて来ていて、ただでさえ親和が多くて辛いのに、他のデッキはみんなBG系に勝てるような構成、ないしは五分程度を取って来ている。
というまさに最悪なメタゲームだと予想しました。

また《未練ある魂》の採用によりミラーマッチが本当に不毛なゲーム、《未練ある魂》を多く引いた方が勝つような”引きゲー”要素が色濃くなってしまって、それも私の意欲を削いだことは追記しておきます。



■メタゲームの流れを受けて


親和が増加→BG系が減少 と言うわかりやすいメタゲームを受けて私が手に取ったデッキは青赤双子でした。




青赤双子は親和デッキに対して圧倒的な勝率を誇ります。
親和デッキはそのデッキコンセプトから対戦相手への干渉手段は乏しく、こちらの《欠片の双子》への対応手段はメインボードですと2枚から4枚の《感電破》しかありません。
またそれも有効的な対処手段では無いと思っています、色マナがタイトな分《詐欺師の総督》や《やっかい児》などのタップ能力で唯一の色マナを縛られると、そのタイミングでキャストせざるを得ないことが多いからです。

サイド後も双子側は《古えの遺恨》や《神々の憤怒》などのクリティカルなサイドボードが取れる為、メインサイド合わせて有利なマッチアップと言えるでしょう。


しかし青赤双子はそのデッキコンセプト上、BG系のデッキには苦戦を強いられます。
《思考囲い》などの各種手札破壊、《突然の衰微》を代表する確定除去の前では《欠片の双子》コンボは達成し辛いからです。

ですがBG系はタッチ白が増加していてマッチアップ的に(未だ不利ではあるが)やや相性が改善しているところや、前述していた通りそもそもBG系デッキが減っていること、BG系デッキに強い親和デッキが増加していることを加味した結果、

『Day1はそのデッキの対応力の高さからBG系を選択しているプレイヤーはある程度いるが、Day2にまで行ければ親和デッキに打倒されて、数を減らしているだろう。』

と私は考え、青赤双子を持ち込むことを決めたのでした。



2.使用したデッキリストと各パーツの説明
sample deck
23land
5 《島/Island》
4 《霧深い雨林/Misty Rainforest》
4 《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
3 《蒸気孔/Steam Vents》
3 《硫黄の滝/Sulfur Falls》
2 《僻地の灯台/Desolate Lighthouse》
1 《山/Mountain》
1 《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》

14creature
4 《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》
2 《呪文滑り/Spellskite》
4 《詐欺師の総督/Deceiver Exarch》
2 《やっかい児/Pestermite》
2 《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》

23creature
4 《稲妻/Lightning Bolt》
4 《血清の幻視/Serum Visions》
3 《呪文嵌め/Spell Snare》
3 《よじれた映像/Twisted Image》
1 《払拭/Dispel》
3 《差し戻し/Remand》
1 《電解/Electrolyze》
4 《欠片の双子/Splinter Twin》
15sideboard
2 《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》
2 《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》
2 《古えの遺恨/Ancient Grudge》
3 《血染めの月/Blood Moon》
2 《神々の憤怒/Anger of the Gods》
4 《誘惑蒔き/Sower of Temptation》


■《よじれた映像》が3枚



これが他の双子デッキと比べて一番の特色でしょう。
1枚刺しているリストはそれなりにありますが、3枚投入しているリストはあまり見ません。


・環境のトップメタと想定している親和デッキに対して有効なカードであること
→《信号の邪魔者》、《羽ばたき飛行機械》の除去、《頭蓋囲い》の装備されたクリーチャーからのダメージ軽減等

・数は減らしているが一定数いるだろう《出産の殻》デッキに対しても有効なカードであること
→《極楽鳥》、《貴族の教主》、《根の壁》などの各種マナクリーチャーを除去

・PTQを突破していた青赤双子デッキはコンボ型に特化している構成が多く、《呪文滑り》がメインボードから4枚ないしは3枚搭載されている傾向にあり、ミラーマッチでも活きる可能性が高い



などが私が複数枚採用した主な理由です。
あとは対戦相手がこのカードに慣れていなかったり、予想されないことが多く、トリックとして使いやすいことや、《瞬唱の魔道士》のフラッシュバックしやすいスペルをもう少し採用したいなど、様々な双子デッキの形を回してみて思ったことなども理由に含まれます。



■《詐欺師の総督》4: 《やっかい児》2



単純に《欠片の双子》コンボを目指すのであれば《詐欺師の総督》の方がタフネスが4あるため優れています。ただ、コンボが決まり辛いマッチアップですとパワーが2あったり、回避能力を持っている 《やっかい児》の方が優れていたり、この辺は青赤双子を使うプレイヤーにとっては常に悩みの種ですよね。

ここの枚数比率も《よじれた映像》が関わってきています、《詐欺師の総督》に《よじれた映像》して4点!って何かふざけているように思えるかも知れませんが、これが結構打点を補います。



■《呪文嵌め》3枚



親和デッキは《アーティファクトの魂込め》、双子同型は《呪文滑り》の増加。

またトリココントロールなどのマッチアップでも各種カウンター呪文や、《瞬唱の魔道士》などをカウンターでき、メインは《ヴェンディリオン三人衆》、《やっかい児》などの各種クロック、サイド後は”通したら勝ち”と言っても支障が無い《血染めの月》をキャストする時のバックアップとなります。

BG系にも言わずもがなですね、後手でも強いカードはこの環境殆ど存在しないと言っても良いくらいなので、《呪文嵌め》は環境の中でもかなり異彩を放つカードと言えるでしょう。



■《血染めの月》をサイドに3枚



紳士の嗜み。これを入れたいが為に純正双子を使っていると言っても良いでしょう。
メインに入れているリストも結構ありますが、同型や、赤単だったり、また展開次第では弱かったり。
裏目が強いカードをメインボードに入れるのは好きではないので、色々試しましたが結局サイドに全部落としました、普通が一番。



■サイドボードに《誘惑蒔き》4枚



BG系に4:6まで持って行くカード、これ引かなきゃ勝てません、だから4枚、簡単。
《突然の衰微》、《ヴェールのリリアナ》が効いてしまうので《不忠の糸》ではダメ。
《見栄え損ない》が減っているのも追い風ですね、《殺戮の契約》はごめんなさい。

BG系をメインターゲットにしているサイドカードですが、様々なマッチアップでサイドインします。
特に《出産の殻》デッキに対しては相手もサイド後に《突然の衰微》、《思考囲い》、《呪文滑り》などの10枚前後の妨害要素でこちらのコンボを阻害してくるので、サイド後はBG系と同じくらいコンボが決まりません。

そういうマッチアップでもサイドイン、サイド後は概ね青赤双子ならぬ”青赤《誘惑蒔き》”と言っても差支えが無いかも知れません。



■土地周り

最後にマナベースです。
最近はトリココントロール、マーフォーク、双子同型で《広がりゆく海》が多数メインから採用されているリストが散見されています。

基本的に青赤なので《広がりゆく海》のマナベース阻害によって不自由は無いのですが、プレイテストで赤マナを攻められるとフェッチランドから持って来れる赤マナが無くなって赤赤が出ない→《欠片の双子》がキャスト出来ず。というパターンがそれなりにありました。
ですのでそれを考慮して《硫黄の滝》を1枚減らして《蒸気孔》を3枚に。
サイドボードの《古えの遺恨》用の緑絡みのショックランドも《繁殖池》では無く《踏み鳴らされる地》にすることによってフェッチランドから持って来られる赤マナが基本地形含めて5枚になりました。

これによってマナベースは青が19で赤が17、少し赤が多いようにも思えますが、上記の理由と、サイド後の《神々の憤怒》を安定して3T目にキャストするにはあっても良いでしょう。
青マナも《謎めいた命令》が入っているならもう1枚程度欲しい所ですが、自分の構成では入れていないので、19は充分だと思えます。

無色地形2枚の枠は《地盤の際》と争いますが、様々なマッチアップでの安定性や、ロングゲームでの強さを考慮して《僻地の灯台》で統一。




3.サイドボードプラン


■親和


サイドin

2 《仕組まれた爆薬》
2 《古えの遺恨》
2 《神々の憤怒》



サイドout

2 《ヴェンディリオン三人衆》
3 《差し戻し》
1 《払拭》


あるだけ除去をサイドイン、サイド後もコンボの達成のし易さはあまり変わらないマッチアップなので、《欠片の双子》はすべて残します。
メインサイド合わせて『相手の場を裁いてコンボを決める』に注力します。



■BG系

サイドin


4 《誘惑蒔き》
3 《血染めの月》
2 《大祖始の遺産》
2 《仕組まれた爆薬》



サイドout


4 《詐欺師の総督》
2 《よじれた映像》
1 《払拭》
4 《欠片の双子》


メインボードはかなり相性が悪いです。相手の土地が詰まっていて《差し戻し》を連打しながら飛行ビートか、それが出来ないのであれば相手の除去に突っ込む覚悟で《欠片の双子》をクリーチャーに付けてみても良いでしょう。

サイド後はサイドインしたカードを如何に引けるかのマッチアップになります、が概ね不利であることは変わらないでしょう。



■青赤双子


サイドin

2 《大祖始の遺産》
2 《誘惑蒔き》



サイドout

4 《欠片の双子》


正直《欠片の双子》コンボなんて決まりません。
各種除去、打消し、《呪文滑り》、タップするクリーチャー群を掻い潜ってコンボを達成することは困難です。
コンボを決めるフリをしながら殴り合うゲームになります。

サイド後は相手の《瞬唱の魔道士》、《渋面の溶岩使い》をけん制出来る《大祖始の遺産》をサイドイン、あとは単純な飛行クロックで、相手の《呪文滑り》を奪ったり出来る《誘惑蒔き》を少々。
結構腕が出るマッチアップです、だから当たりたくない!



■《出産の殻》デッキ

サイドin


2 《大祖始の遺産》
2 《古えの遺恨》
3 《血染めの月》
2 《神々の憤怒》
4 《誘惑蒔き》



サイドout


2 《詐欺師の総督》
3 《呪文嵌め》
1 《払拭》
3 《差し戻し》
4 《欠片の双子》

メインは相手の干渉手段の少なさから《欠片の双子》コンボが決めやすいので、積極的に狙っていきます。
サイド後は相手が干渉手段をサイドインしてくるので、逆にそれをかわすようなサイドボードを。
『場をさばいて飛行ビート』これがサイドプランです。



■トリココントロール


サイドin

2 《大祖始の遺産》
3 《血染めの月》



サイドout

2 《欠片の双子》
2 《稲妻》
1 《よじれた映像》


メインはややキツいマッチアップです、除去が多く、双子コンボは決め辛いので概ねビートすることになります。
早めに《流刑への道》を打たせてマナ差を活かしたゲームを目指します。

サイド後はトリココントロールには1枚コンボ(?)である《血染めの月》を如何に通すかのゲームなります。
フラッシュ持ちクリーチャーで揺さぶって、カウンターでバックアップしながら《血染めの月》をキャスト出来る盤面を作りましょう。



4.大会結果、まとめ


Day1
1R Bye
2R Bye
3R Bye
4R グリクシスコントロール
5R BGw
6R 青トロン ××
7R 双子
8R Zoo ×
9R スケープシフト ×



青トロンは絶望的なマッチアップでした。
《血染めの月》も対して効きませんし、《撤廃》などのバウンススペル、《差し戻し》や《卑下》などの各種打ち消しを前に完敗。

青トロン以外もグリクシスコン、BGw、スケープシフトなど相性の悪いマッチアップが多くクラクラしていましたが、のらりくらり凌いでなんとか初日は1敗で終えることに成功。



Day2
10R 親和 ×
11R トリココントロール
12R スケープシフト ××
13R 親和
14R 蔵の開放 ×
15R トリココントロール ×


二日目はメインターゲットとしていた親和と二回当たれて僥倖。
負けはスケープシフト。
どうも今大会の勝ち組はスケープシフトだったようです、双子からすると基本的に当たりたくない
マッチアップなので、二回踏んだら一回くらい負けます。
トータル13勝2敗で終了。


参加者が2000人以上のトーナメントと言うことで同ポイントだった時に用いられるオポーネントマッチパーセンテージと言う値は二日目開始でリセット、その参加者の多さからなんと2敗でトップ8を逃すプレイヤーが3人も出るという地獄トーナメントの様相に。
果たして自分の順位は・・・・・7位!あぁ良かった。




5.シングルエリミネーションとまとめ


QF タルモ親和 ××


シングルエリミネーションは一没に終わってしまいました。
正直事故事故だったので何ともかんともって感じですが、やはり悔しいですね、優勝したかった。
と、言うことで私のグランプリ神戸は最終7位、1000$とプロポイント4点で幕を閉じました。



プロポイントシーズンの始まり、またBIG MAGICさんとプロスポンサー契約をしてから初めてのグランプリで結果を残せたことは素直に嬉しいです。
今期もプラチナレベルを目指すとすると”あと44点のプロポイント”と、道が遠すぎて全く現実味がありませんが、コンスタントに結果を出して目指せれば良いなあと思っています。





如何だったでしょうか、それでは皆さん次の記事でお会いしましょう。


市川ユウキ
マスクスブロック時代よりMTGを始め、インベイジョンが入る頃に引退。
ミラディンの傷跡が発売した頃にMagic OnlineでMTGに復帰。
ほぼ同時期にニコニコ生放送にて"瀬畑"のハンドルネームでMagicOnline配信を開始。
その独特で軽妙な毒舌トークと、確かな実力から人気を博す。

配信者としてのキャリアを重ねると共に地道な努力を続け、2013年MOPTQを2期連続で突破。
更に日本レガシー選手権において前人未到の2連覇を果たし一気に国内においてブレイク。

そして2014年。『プロツアー・ニクスへの旅』『プロツアー・マジック2015』において、
2連続プロツアーTOP8入賞を果たし、プロ最高ランクであるプラチナレベルにまで上り詰める。
『プロツアー・マジック2015』において使用した《世界を目覚めさせる者、ニッサ》を4枚投入した『ジャンド・プレインズウォーカー』デッキは世界のトッププレイヤー達から賞賛を受けるなど、デッキチューナーとしての評価も高まっている。

正に今、世界で最も注目を集めているプレイヤーだ。


主な戦績
・プロツアー・マジック2015 6位
・プロツアー・ニクスへの旅 4位
・グランプリ神戸2014 7位
・The Last Sun 2013 ベスト8
・Eternal Festival Tokyo 2013  3位
・2013日本レガシー選手権(夏)優勝
・2013日本レガシー選手権(春)優勝

市川ユウキ(瀬畑太郎)
「瀬畑太郎の紙とMOのあいだ」


第1回
第2回
第3回

特別企画「新環境でつかまえて」

”プロツアーニクスへの旅”に向けての調整録

市川ユウキのGP神戸調整録


 
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