TOP Bigweb MTGショッピングページ
黒田正城 「私は5色のデッキが大好きだ その2」 
 
text by Masashiro Kuroda


 全色のマナを一つずつ要求する5マナクリーチャーには夢がある。5マナ5/5というかなりのサイズが基本値で、たまに7/7という怪物も発生する。能力もめちゃくちゃなものが多く、妙なデッキが好きなプレイヤーにはたまらない存在だ。

 前回は《彩色マンティコア》の可能性についてダラダラと論じてみた。実際にいろいろと試行錯誤をしてデッキの形を模索したところ、《森の女人像》など様々なマナサポートを有する緑ベースのデッキ、《原形質捉え》を採用した、青白緑のコントロールデッキ、の二つが生き残ったが、残念ながらいずれも満足のいく結果にはならなかった。
一応、緑ベースのデッキには何らかの可能性が残っているので、恥を忍んで紹介することにしよう。


Sample Deck
24land
4《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
3《奔放の神殿/Temple of Abandon》
4《寺院の庭/Temple Garden》
2《豊穣/Abundance》の神殿》
2《静寂の神殿/Temple of Silence》
4《マナの合流点/Mana Confluence》
2《繁殖池/Breeding Pool》
1《草むした墓/Overgrown Tomb》
1《神秘の神殿/Temple of Mystery》
1《凱旋の神殿/Temple of Triumph》

22creature
4《エルフの神秘家/Elvish Mystic》
4《森の女人像/Sylvan Caryatid》
3《復活の声/Voice of Resurgence》
4《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》
2《ロクソドンの強打者/Loxodon Smiter》
1《世界を喰らう者、ポルクラノス/Polukranos, World Eater》
4《彩色マンティコア/Chromanticore》
14spell
1《見えざる者、ヴラスカ/Vraska the Unseen》
1《英雄の導師、アジャニ/Ajani, Mentor of Heroes》
2《太陽の勇者、エルズペス/Elspeth, Sun's Champion》
2《払拭の光/Banishing Light》
3《歓楽者ゼナゴス/Xenagos, the Reveler》
3《ワームの到来/Advent of the Wurm》
2《ミジウムの迫撃砲/Mizzium Mortars》


うーん、どう見ても適当に高いカードを突っ込んだようにしか見えないデッキになってしまった。特に土地がひどい。前回の記事であれだけ推した《市場の祝祭》も、実際使ってみるとあらら?これだけ高速化の進んだ環境では非常にもっさりした動きが目立ち、残念ながらベンチ入りとなってしまった。今度はM15の《世界を目覚めさせる者、ニッサ》を入れて試してみよう。



 代わりに入ったのが《歓楽者ゼナゴス》だ。1~2ターン目のマナ加速→3ターン目のゼナゴスからトークン生成→4ターン目にゼナゴスのマナ能力とつなげば、《市場の祝祭》と同じように6~7マナを生み出すことができる。3ターン目に生み出した2/2トークンに、《彩色マンティコア》を授与するという強い流れがたまに発生した。

 実際の大会に出る前にMOで何度かプレイテストをしたのだが、ここでたまたま3-0が2回続いてしまい、「ひょっとしていける?!」と大きな勘違いをすることに。BIG MAGICの大会では3勝2敗と、なんとも微妙な結果に終わった。そのあともMOで繰り返しチャレンジしたが、チケットがものすごい勢いで減り始めたため、残念ながら「このデッキを調整するのはここまで!」となったのだった。



 さて、ただ失敗作を作ってそれで終わり、では経験値がたまらないので、このデッキに関する反省点を挙げてみよう。

・土地が痛すぎて、マンティコアの絆魂が活躍する前に死んでしまう
《マナの合流点》のデメリットはもちろん認識しており、それをカバーするために《クルフィックスの狩猟者》を入れてみたのだが、バーンのような前のめりのデッキに対してはほとんど効果をなさなかった。そもそも絆魂の付いている《彩色マンティコア》がライフを増やしてくれるはずだったのに、ほとんど活躍しなかった。
タップインの土地が多すぎるのも大問題。やはり《市場の祝祭》をもう少し研究した方が良かったかもしれない。M15のダメージランドも試す価値はありそうだ。


・マンティコアがキーカードになっておらず、普通に2色、3色で組んだ方が良いデッキになった

 勝ったゲームを思い出してみると、マンティコアが想定通りの働きをしたのは数回だけ(写真もその1例)しかなく、理想と現実のギャップを見せつけられてしまった。

 その他のゲームは、ほとんど赤白緑のナヤカラーでも実現できる内容だった。手札がないときに《次元の浄化》をくらって万事休すかと思った瞬間、サイドから入れた《紅蓮の達人チャンドラ》をドロー→ライブラリトップが《英雄の導師、アジャニ》→アジャニの能力で3枚を見たら《太陽の勇者、エルズペス》を発見!プレインズウォーカー強いね!などなど…。
本気でマンティコアを使いたいのであれば、呪禁持ちを採用するなど、もっとこのカードを活かせる構成にする必要がありそうだ。(とは言っても、呪禁デッキもナヤカラーで十分なのだが…)



・マンティコアを無理やり使った、ただの遅いミッドレンジであり、青白に致命的な相性差ができてしまった

 MOでチケットがどんどん減っていった原因がこれ。
普通のナヤカラーであれば、5マナ域は《嵐の息吹のドラゴン》である。それをわざわざ《拘留の宝球》で対象に取れ、速攻も持っていないクリーチャーに入れ替えているのだから弱くなって当たり前。役に立たないマンティコアと入れ替える、専用のサイドボードが必要だ。《ヴィズコーパの血男爵》なんかとてもおすすめである。

 というわけで、今回のデッキは大失敗に終わってしまった。しかしこの結果は私の構築能力が低かっただけで、もっと良い形のデッキがあるのではないだろうか。この記事を読んでくれている人の中には、マンティコアで勝ちまくっている人もいるのではないだろうか。
M15が入れば、ラヴニカブロックがスタンダードから落ちて環境が変われば、マンティコアが数千円のトップレアになっているかもしれない。しれない。しれない。
なので、これからも私はこのカードと付き合っていくことにしようと思う。

まあ…もしかしたら来週には《巣主スリヴァー》に乗り換えてるかもしれないけどね!




黒田正城
主な戦績
プロツアー名古屋2005 ベスト8
プロツアー神戸2004 優勝
グランプリ横浜2010 準優勝
The Finals2005 優勝
グランプリ大阪2005 チーム戦優勝(P.S.2)
グランプリ横浜2003 ベスト4
マスターズヴェニス2003 チーム戦優勝(P.S.2)
グランプリ名古屋2002 チーム戦優勝(P.S.2)
グランプリ横浜2001 チーム戦準優勝(Poor Shark)
日本選手権1999 準優勝
インビテーショナル2005 出場(アジア太平洋地区繰り上げ)
etc...

天使とドラゴンをこよなく愛する、日本を代表するプレイヤー。
プロツアー神戸2004では日本人初のプロツアー優勝を成し遂げるなど、 数々の実績を誇る。

過去の記事
「スタンダード今昔」
第1回 "ラヴニカへの回帰"を振り返る
第2回 GP北九州~リアニメイトと共に~
 

「私は5色のデッキが大好きだ」
その1
その2


「私は赤いカードが大好きだ」
 
記事一覧へ戻る
(C) Copyright BIG MAGIC All Rights Reserved.