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「スタンダード今昔」第2回 GP北九州~リアニメイトと共に~ 
 
text by Masashiro Kuroda

 私は重くて強いクリーチャーが大好きだ。

 初めて買ったパックから出た《パラディア=モルス/Palladia-Mors》を筆頭に、1999年日本選手権で活躍した《新緑の魔力/Verdant Force》、プロツアー神戸のMVPである《弧炎撒き/Arc-Slogger》、GP横浜で《超起源/Hypergenesis》から湧いて出た《大祖始/Progenitus》や《絶望の天使/Angel of Despair》、《テラストドン/Terastodon》。こういった、ある意味ふざけたクリーチャーをトーナメントで使えるのはとても幸せだ。





 とは言っても、これらのファッティ達が要求する法外なマナを支払ってやる必要はない。序盤が命のマジックにおいて、そんな悠長なことをしていればあっという間に負けてしまうだろう。上記のクリーチャーに関しても、弧炎撒き以外はすべてインチキ技経由で場に出しているのだ。

 先日行われたGP北九州に向けて、調整を始めたのは6月頃。デカブツ好きの私は、《静穏の天使/Angel of Serenity》を《堀葬の儀式/Unburial Rites》で釣り上げる、いわゆるリアニメイトを使おうと考えていた。今更なので詳しい解説は避けるがこんな形のやつだ。

Sample Deck
23land
1 《魂の洞窟/Cavern of Souls》
2 《森/Forest》
3 《孤立した礼拝堂/Isolated Chapel》
4 《草むした墓/Overgrown Tomb》
4 《陽花弁の木立ち/Sunpetal Grove》
4 《寺院の庭/Temple Garden》
1 《大天使の霊堂/Vault of the Archangel》
4 《森林の墓地/Woodland Cemetery》

25creature
3 《酸のスライム/Acidic Slime》
3 《静穏の天使/Angel of Serenity》
4 《東屋のエルフ/Arbor Elf》
4 《アヴァシンの巡礼者/Avacyn's Pilgrim》
1 《悪鬼の狩人/Fiend Hunter》
4 《修復の天使/Restoration Angel》
2 《罪の収集者/Sin Collector》
4 《スラーグ牙/Thragtusk》

12spell
4 《忌まわしい回収/Grisly Salvage》
3 《根囲い/Mulch》
1 《血統の切断/Sever the Bloodline》
4 《堀葬の儀式/Unburial Rites》
15sideboard
3 《突然の衰微/Abrupt Decay》
1 《酸のスライム/Acidic Slime》
1 《魂の洞窟/Cavern of Souls》
2 《ケンタウルスの癒し手/Centaur Healer》
3 《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》
2 《悪鬼の狩人/Fiend Hunter》
1 《花崗岩の凝視/Gaze of Granite》
2 《セレズニアの声、トロスターニ/Trostani, Selesnya's Voice》


 どんなトーナメントでも入賞者を生み出すこのデッキはとても強かったし、自然と天使を使うことができた(デッキに天使かドラゴンを入れるのは、私にとって必須条件である)。 
だが、このデッキはクリーチャーで殴る以外に勝ち手段がなく、そのため不本意な敗北を喫することがたまにあった。


 そんな中、たまたま出会ったこのデッキに私は大きく心を動かされた。
Sample Deck
23land
2 《血の墓所/Blood Crypt》
1 《魂の洞窟/Cavern of Souls》
3 《竜髑髏の山頂/Dragonskull Summit》
3 《神無き祭殿/Godless Shrine》
1 《孤立した礼拝堂/Isolated Chapel》
3 《根縛りの岩山/Rootbound Crag》
4 《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
3 《陽花弁の木立ち/Sunpetal Grove》
3 《寺院の庭/Temple Garden》

14creature
3 《静穏の天使/Angel of Serenity》
4 《ボロスの反攻者/Boros Reckoner》
2 《オリヴィア・ヴォルダーレン/Olivia Voldaren》
1 《狂気の種父/Sire of Insanity》
4 《スラーグ牙/Thragtusk》

23spell
4 《忌まわしい回収/Grisly Salvage》
2 《収穫の火/Harvest Pyre》
2 《冒涜の行動/Blasphemous Act》
4 《信仰無き物あさり/Faithless Looting》
3 《未練ある魂/Lingering Souls》
4 《根囲い/Mulch》
4 《堀葬の儀式/Unburial Rites》
15sideboard
2 《突然の衰微/Abrupt Decay》
1 《酸のスライム/Acidic Slime》
1 《軍勢の集結/Assemble the Legion》
1 《冒涜の行動/Blasphemous Act》
1 《魂の洞窟/Cavern of Souls》
2 《墓場の浄化/Purify the Grave》
2 《天啓の光/Ray of Revelation》
1 《狂気の種父/Sire of Insanity》
2 《殺戮遊戯/Slaughter Games》
2 《戦導者のらせん/Warleader's Helix》

 このデッキは4色リアニという名前で既に知られていたようだが、私にとっては大きな衝撃であった。とりあえず使ってみるか…と出場したMOのプレミアイベントでは、複数の対戦相手に「ふざけたデッキ使うなコノヤロウ、マナバランスもメチャクチャだろ」と罵声を浴びせられながらも連勝を重ね気がつけば2位。決勝の相手も完全に同型であったことから、「このデッキは強いのではないか?」と淡い期待を抱くようになった。


 このデッキは墓地のカードを手札のように扱うため、動きが複雑で長期戦にも強い。《根囲い/Mulch》で増やした手札を《信仰無き物あさり/Faithless Looting》で整理、《忌まわしい回収/Grisly Salvage》で《スラーグ牙/Thragtusk》を手札に入れつつ、静穏の天使と堀葬の儀式を墓地に落とす…などなど、相互作用が山のようにあり回していてとても面白い。上述した白黒緑のリアニメイトで懸念事項だった勝ち手段の乏しさに関しても、《ボロスの反攻者/Boros Reckoner》+《冒涜の行動/Blasphemous Act》《収穫の火/Harvest Pyre》という飛び道具が加わったことによって大きく幅が広がった。





 特に《収穫の火/Harvest Pyre》は絶大な奇襲効果を持っており、《スフィンクスの啓示/Sphinx's Revelation》を使うデッキに数え切れないほどのとどめを刺してくれた。



 私はこのデッキを第一選択肢として調整することにした。
 しかしその決意に大きく立ちはだかったものがあった。この時期にリアニメイトを使っていたプレイヤーならすぐ思いつくだろう。「M14」だ。



 M14に収録されたカードには、このデッキにとって完全に致命傷となるものが含まれていた。言うまでもないことだが、《漁る軟泥/Scavenging Ooze》のことである。私は最初このカードを舐めていた。《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》と大して変わらないでしょ?と。





 しかしその考えは完全に誤っていた。瞬く間にリアニメイトは絶滅危惧種となり、間違いに気づいた私も新たなデッキを探す覚悟をしたものだった。その一方、このデッキでもう少し頑張ってみたいという考え(意地)もあった。


 最近はデッキの調整になかなかまとまった時間が取れず苦労しているのだが、今回のデッキにはかつてないほど手をかけたという思いがある。先ほど紹介したリストはどんどん形を変えていった。大きな変化として真っ先に思いつくのは《グリセルブランド/Griselbrand》の採用である。このカードが1枚デッキに潜むだけで、ビートダウンに対するライフ獲得能力と、コントロールや同型に対する圧倒的なアドバンテージ獲得能力を得ることができた。


 この頃から《未練ある魂/Lingering Souls》が数を減らしはじめる。チャンプブロックしかできないトークンはグルール系のデッキに対し非常に無力で、《ゴーア族の暴行者/Ghor-Clan Rampager》も相まってほとんど意味をなさないということがわかってきたからだ。それに伴い、プレイできない冒涜の行動も姿を消すことになる。代わりに入った《火柱/Pillar of Flame》が、デッキの安定性を大きく向上させた。


 このあたりで2つのPTQに出場したのだが、いずれも7勝2敗というギリギリ合格点のラインにとどまったため、調整を継続することにした。 7月中旬の話である。


 この頃にはリアニメイトというデッキが死滅状態となり、墓地対策も漁る軟泥以外ほとんど見なくなった。これは私にとって好都合で、GP本番までこの流れが続いてくれれば…と願っていた。
しかし、ここで2度目の悪夢が訪れる。


 私が最も尊敬するプレイヤーである、Brian Kiblerが作成したグルールが、この頃猛威をふるい始めていた。このデッキは漁る軟泥に加え、サイドボードに恐怖の《燃え立つ大地/Burning Earth》が4枚という構成になっていた。さらに言えば、このデッキが最も苦手とするクリーチャーである《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》も4枚で、「なんの嫌がらせ?」と思ってしまうような構成であった。
(もちろん、キブラーはこんなデッキを意識したわけではない。とばっちりである。)





 当たり前の話だが、《燃え立つ大地/Burning Earth》はエンチャントだ。対策するためには《天啓の光/Ray of Revelation》をサイドから投入する必要があるが、このカードは他に使うタイミングがないため無駄になりやすい。しかし入れなければ燃え立つ大地を貼られた瞬間にゲームセットという流れになってしまうため、非常に苦しいサイドボーディングを強いられるのだった。


 グルールが流行りだすと、それを食うためのバントオーラも増殖し始めた。こっちの方が深刻な相性だとわかったのは少し後の話なのだが、いずれにしてもグルールとバントという明確な脅威が見えてしまった以上、これらのデッキに勝てないのであればこのデッキは諦めようと考えた。(一応言い訳しておくと、このデッキはジャンド、黒緑、青白系に対してかなり強い。そのためここまで諦めきれず調整を続けていた。)


 本番1週間前まで明確な答えが見つからず、そろそろグルールの調整でも始めようかな…と思い始めた矢先に大きな変化が訪れた。MOでカードを眺めていた時に、ふと目にとまった《古鱗のワーム/Elderscale Wurm》は、まさに求めていた品質そのものだった。





 火力の少ないキブラーグルールにとって、7/7のクリーチャーを除去するのは想像以上に大変な作業である。仮に除去できたとしても、そこからさらに7点のダメージを与えなければゲームに勝つことはできず、その頃には静穏の天使やスラーグ牙がわらわらと並んでいる。サイドボードから用意した燃え立つ大地を何枚貼っていようと、このワームが場にいる限り無駄カードである。


 バントオーラに対しても《古鱗のワーム/Elderscale Wurm》は想像以上の効果を発揮した。ワームに対処できるカードがデッキに数枚しか入っていないため、場に出るだけで相手が投了する、というケースもしばしば発生したのだった。

 
 これで決心が付いた。
これだけ準備できたのならこのデッキで出場しよう。思うような結果にならなかったとしても悔いはない。そう思えるデッキに仕上がった。

Sample Deck
24land
4 《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
3 《血の墓所/Blood Crypt》
3 《竜髑髏の山頂/Dragonskull Summit》
3 《神無き祭殿/Godless Shrine》
3 《根縛りの岩山/Rootbound Crag》
3 《陽花弁の木立ち/Sunpetal Grove》
3 《寺院の庭/Temple Garden》
1 《魂の洞窟/Cavern of Souls》
1 《孤立した礼拝堂/Isolated Chapel》

14creature
4 《ボロスの反攻者/Boros Reckoner》
4 《スラーグ牙/Thragtusk》
3 《古鱗のワーム/Elderscale Wurm》
2 《静穏の天使/Angel of Serenity》
1 《グリセルブランド/Griselbrand》

22spell
4 《信仰無き物あさり/Faithless Looting》
4 《火柱/Pillar of Flame》
4 《忌まわしい回収/Grisly Salvage》
3 《根囲い/Mulch》
2 《破滅の刃/Doom Blade》
1 《収穫の火/Harvest Pyre》
4 《堀葬の儀式/Unburial Rites》
15sideboard
2 《破滅の刃/Doom Blade》
2 《天啓の光/Ray of Revelation》
2 《漁る軟泥/Scavenging Ooze》
2 《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》
3 《解放の樹/Tree of Redemption》
1 《オリヴィア・ヴォルダーレン/Olivia Voldaren》
1 《原初の狩人、ガラク/Garruk, Primal Hunter》
2 《狂気の種父/Sire of Insanity》
 というわけで鼻息荒く望んだGPだったが、肝心の結果は…


 直前トライアルで5-0を達成したものの、そこで運が尽きたのか本戦は0-3で終了となってしまった。


 今回ずっと調整に付き合ってくれたM君(仮名)は10-3という成績だったため、単純に私が下手だったと思いたい。私はその後8人トーナメントに3回出場し、3-0、3-0、1-1という成績だったことも言い訳として付け足しておこう。
(編集注:M君は村栄さんのことではありません。)


 スタンダードはまもなく新環境に移行する。
 《堀葬の儀式/Unburial Rites》がなくなってしまうと、リアニメイトというアーキタイプを継続するのは難しい。まがい物のようなデッキを作ることはできるが、《忌まわしい回収/Grisly Salvage》で墓地に《オブゼダートの救済/Obzedat's Aid》が落ちても、なんの意味もない。しかし《灰燼の乗り手/Ashen Rider》というニンジンをぶら下げられてしまった以上、チャレンジする価値はあると思っている。それを探し出して実現することが、マジックの本当の醍醐味だ。


 新環境でも、愛すべきデカブツとマジックを楽しんでいこう。


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