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日比野 泰隆 電波なモダンデッキ録 第2回 「リビングエンド」 ~蘇る《生ける屍》~ 
 

text by Yasutaka Hibino

リアニメイト
という響きには、独特の魅力があります。

 ・「死者が蘇る」という背徳的なイメージであること
 ・墓地というリソースを活用する玄人向けの戦術であること
 ・普段は使わないようなクリーチャー達が使えること
 ・決まった時の圧倒的な一撃必殺の爽快感

などの魅力から、ファンが多いアーキタイプでもあります。

 リアニメイトは昔から脈々と受け継がれており、そのアーキタイプ名の元となった《再活性/Reanimate》をはじめ「墓地にあるカードを場に出す」という効果を持つカードは、MTGの黎明期から現在の最新スタンダード環境まで、様々な種類が存在しています。








今回ご紹介するのは、時のらせんにて古えの強力カード《生ける屍》をリメイク版である《死せる生》を利用した、モダン版リアニデッキのとも言うべき「リビングエンド」です。




Michael Hetrick
プロツアー『神々の軍勢』 初日成績優秀者
19land
4《黒割れの崖/Blackcleave Cliffs》
1《血の墓所/Blood Crypt》
1《森/Forest》
1《神無き祭殿/Godless Shrine》
4《燃え柳の木立ち/Grove of the Burnwillows》
1《ケッシグの狼の地/Kessig Wolf Run》
1《草むした墓/Overgrown Tomb》
1《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
1《沼/Swamp》
4《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs》

29creature
4《意思切る者/Architects of Will》
4《死の一撃のミノタウルス/Deadshot Minotaur》
4《大爆発の魔道士/Fulminator Mage》
1《ジャングルの織り手/Jungle Weaver》
4《巨怪なオサムシ/Monstrous Carabid》
4《青ざめた出家蜘蛛/Pale Recluse》
2《叫び大口/Shriekmaw》
2《猿人の指導霊/Simian Spirit Guide》
4《通りの悪霊/Street Wraith》

12spell
4《暴力的な突発/Violent Outburst》
4《悪魔の戦慄/Demonic Dread》
4《死せる生/Living End》
15sideboard
4《鋳塊かじり/Ingot Chewer》
1《ジャンドの魔除け/Jund Charm》
4《虚空の力線/Leyline of the Void》
2《叫び大口/Shriekmaw》
4《罪の収集者/Sin Collector》

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 このデッキは、唯一にして絶対の必殺技、《死せる生》を決めるデッキです。

 動きとしては非常に単純で

1.ひたすらサイクリング付きクリーチャーをサイクリングして、ドローを進めるとともに墓地にクリーチャーを送る。

2.《暴力的な突発》や《献身的な嘆願》など、「続唱」を持つスペルをプレイする

3.「続唱」の効果によってライブラリの上から「2マナ以下のスペル」が出るまでライブラリをめくり続けるが、デッキの中の2マナ以下のスペルは《死せる生》(0マナ)しか存在しないため、確実に《死せる生》がプレイされる。

4.《死せる生》により、今まで戦場に居たクリーチャーは墓地に送られ、サイクリングによって墓地に送られたクリーチャー達が舞い戻ってきます。

 実質的に《神の怒り》された上に、相手の場には大量のクリーチャーが並ぶため、マトモに決まってしまうと、為す術無く蹂躙されてしまうでしょう。

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 このデッキを相手にして警戒するべきポイントは、《死せる生》を仕掛けてくるタイミングです。

 採用されているカードは《暴力的な突発》4枚が確定として、《悪魔の戦慄》《献身的な嘆願》などが採用されていますが、いずれも3マナのスペルであり、8枚積まれている形が多いです。

デッキに8枚入っているカードを3T目までに引く期待値は1.20枚。確率は75%。マリガンしたり、サイクリングでドローすることを考えると更に高くなるので、3マナ揃う頃には《死せる生》はほぼ撃てる状態であると思った方が良いでしょう。

 とはいっても、3マナが揃った時点では墓地に2~3枚程度しかクリーチャーが送られていないため、実質的な勝負のターンは4、5ターン目となるでしょうか。

 メインから可能な対策は、限定的ではありますが。

 ・《コジレックの審問》などのハンデスカードで《暴力的な突発》などを落とす
 ・《マナ漏出》などのカウンターを構える
 ・《漁る軟泥》を早めに出して、こまめに墓地を掃除する
 ・《大祖始の遺産》をメインに入れていた

 上記の対策が取れそうな構成であれば、相手の墓地が溜まってきた頃にカウンターを構えるか、墓地を掃除することで《死せる生》を妨害しましょう。

 特に、青マナが出るデッキであれば《差し戻し》が実質的な確定カウンターにもなるため、仮に手札に持っていなかったとしても、2マナ立てて動くことで相手を牽制することが可能です

 カウンターを構えている際や《大祖始の遺産》を設置している時に注意するのは《内にいる獣》です。 



 このカードは、あらゆるパーマネントをインスタントタイミングで対処することが可能であり、土地も壊すことが可能であるため、エンド時に青マナが出る土地を割られ、カウンターを構えることを不能にされます。

 また、本来デメリットであるはずの3/3トークンも、《死せる生》で場を流してしまえば問題無い、というシナジーも組み込まれています。

 《内にいる獣》はインスタントということもあり、非常に厄介な1枚ではありますが、逆に言えば、リビングエンドが取り得るメインボードでの干渉手段はこのカードのみといっても差し支えありません。相手をする時は、常にこのカードの存在を意識しておきましょう。

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なお、メインから対策が取れない場合は
「俺は《死せる生》を打たれない!  打たれたらどの道勝てないし全力展開!」
と開き直って、全力で相手を殺しに行くのが案外正解だったりします(笑)

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 リビングエンドは、サイドボードからが本当の勝負といっても差し支えありません。
メインデッキでは理不尽にも蹂躙してくるリビングエンドですが、デッキ全体が《死せる生》および墓地に極度に依存しており、サイドから勝ち手段を変えるといったことも困難であり、対策カードが劇的に刺さります。

当然、相手も対策されることを前提に対策の対策を考えてきますが、リビングエンドはデッキの構成上3マナ以下のカードは入れられないという制約が存在するため、対策の対策といっても特殊な形で行わざるを得なくなります。
具体的には、「想起」によって本来は5マナ以上の所を1マナ、2マナでプレイ可能で、墓地にも落ちるため相性が良い《叫び大口》や《鋳塊かじり》。

条件を満たすことで0マナでプレイできる《虚空の力戦》や、1マナでプレイできる《跳ね返りの罠》。
単純に3マナ以上でプレイすることを目的とした《罪の収集者》などです。



よって、相手がサイドボードから入れてくるカードもある程度想像することが可能であるため、「対策の対策」にどのように対応するかを考えることも重要な点となります。

 「対策の対策」も踏まえながら、リビングエンド対策の候補となるカード達を紹介致します。

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■墓地対策系カード

《安らかなる眠り》《大祖始の遺産》《トーモッドの墓所》などの墓地を掃除するカードは非常に効果的で、これらのカードが睨みを効かせている間は、《死せる生》が本来の威力を発揮できません。
対策の対策は基本的に《内にいる獣》ですが、アーティファクトの場合は《鋳塊かじり》でも対処されてしまうため、やや信頼性は落ちます。
置物ではない、インスタントの対策カードである《ラクドスの魔除け》や《ジャンドの魔除け》であれば、奇襲性もあり、対策も難しいため、タイミングさえ合えば完璧な解答となるでしょう。
墓地対策カードは長いMTGの歴史で非常に数多く存在しており、上記で挙げたカードの他にも《漁る軟泥》《フェアリーの忌み者》《虚空の力戦》《土覆いのシャーマン》《萎縮した卑劣漢》《ボジューカの沼》などなど、選択肢は多岐にわたるため、自分の色や戦略と合致したカードを採用しましょう。

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■《エーテル宣誓会の法学者》《弁論の幻霊》《法の定め》

「プレイヤーは1ターンに2回以上スペルをプレイできない」と書いてあるこれらのカードは、必ず2回目以降のプレイになる「続唱」というメカニズムを封殺します。

  ・《エーテル宣誓会の法学者》はアーティファクトなので《鋳塊かじり》で落とされてしまいますが、2マナと軽く、パワーが2あるため、クロックとしての役割も期待できます。

  ・《弁論の幻霊》は《鋳塊かじり》の対象にはなりませんが、《叫び大口》の対象となり、3マナと重く、パワーも1しかありません。(※ストームに対する対策も考えると、こちらに軍配が上がります)

 ・《法の定め》は、《叫び大口》も《鋳塊かじり》も効きませんが、クロックになりません。

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■《虚空の杯》《呪文づまりのスプライト》

「《死せる生》は点数で見たマナコストが0である」という点を逆手に取った対策カードです。

 《虚空の杯》をX=0でプレイすれば、それだけで相手の《死せる生》を止めることが可能です。設置も0マナと非常に軽く、普通、マナコストが0のスペルは入っていないため、不利益を受けるのは相手だけというのも強みです。

 《呪文づまりのスプライト》は、点数で見たマナ・コストが自分のコントロールするフェアリーの数以下のスペルをカウンターしますが、このクリーチャーが場に出た時点ですでに数は”1”であり、万が一除去されたとしても”0”であるため、実質的に確定でカウンターすることが可能です。
1/1の飛行クロッカーが残ることに加えて、カウンター対策として積まれていることが多い《跳ね返りの罠》が効かないという点も強みです。

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■《翻弄する魔道士》《殺戮遊戯》《頭蓋の摘出》

《死せる生》に極度に依存したデッキ構成であるという点を攻める対策カードです。
《翻弄する魔道士》で《死せる生》を指定するだけで、相手はプレイ不可能な状態となり、かつ自身が2点クロッカーとなるため、非常に有効なカードとなります。
《殺戮遊戯》(もしくは《頭蓋の摘出》《思考の大出血》)は、4マナとやや重いものの、リビングエンド側の対策がほぼ不可能であり、プレイすることさえ出来れば非常に有効な1枚となります。

《安らかな眠り》など他の対策カードが既に存在する場合は、《死せる生》ではなく《内にいる獣》を指定することで、相手の有効牌を更に削ぎ落としていく戦術も覚えておきましょう。

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■《ザルファーの魔道士、テフェリー》

「続唱」によって唱えられたスペルは、元のスペルがスタックに存在しているため、それが対戦相手のメインフェイズであったとしても、ソーサリーをプレイできないタイミングとみなされます。
そのため「各対戦相手は、自分がソーサリーを唱えられるときにのみ呪文を唱えられる。」という制約にかかってしまい、《死せる生》をプレイすることは出来ません。クロックを刻める置物としても利用できるほか、瞬速を活かし、相手の「続唱」誘発にスタックでプレイすることで打ち消しのように利用することも可能です。

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■起動型能力を巡るアレコレ

あなたがサイドボードに《真髄の針》もしくは《ファイレクシアの破棄者》を入れていた場合。
劇的に刺さるサイドボードではありませんが、全くの無駄カードでもありません。
 《死の一撃のミノタウロス》などに代表されるサイクリングは「起動型能力」であるため、《真髄の針》でそのカード名を指定することで、サイクリングが出来ず素出しするしかなくなり、そのカードを腐らせることが可能です。
・0マナでサイクリング可能な《通りの悪霊》
・1マナでサイクリング可能な《意思切る者》《死の一撃のミノタウロス》《巨怪なオサムシ》
採用枚数が多い上記カードのうち、まだ1枚もサイクリングされていないもの指定するのがベターです。

 別プランとしては、唯一の起動型能力を持つ《大爆発の魔道士》の指定が挙げられます。あなたのデッキがトロンであったり、土地を伸ばすことを阻害されたくない場合は、《大爆発の魔道士》を指定することで、土地をケアすることが可能です。

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■《墓掘りの檻》について

《墓掘りの檻》は墓地対策カードの代表的なカードであり、《死せる生》にも的確に刺さる!  …と思ってしまいますが、よくカードテキストを見てみましょう。

 《墓掘りの檻》:「クリーチャー・カードは墓地やライブラリーから戦場に出ることができない。」

《死せる生》:「各プレイヤーは自分の墓地にあるすべてのクリーチャー・カードを追放する。その後自分がコントロールするすべてのクリーチャーを生け贄に捧げる。その後自分がこれにより追放したすべてのカードを戦場に出す。

…とんち問題のようですが、《死せる生》は「墓地のカードを一旦追放領域に移したあと、追放領域から戦場に出す」ため「墓地から戦場に出ているわけではない」のです。結論として《墓掘りの檻》が場に出ていたとしても、墓地にいるクリーチャーは戦場に戻ります。

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■敢えて自分のクリーチャーを除去するという選択肢

《死せる生》のプレイにスタックして自分のコントロールするクリーチャーを墓地に送ることで、解決後に再び戦場に戻ってくることが可能です。

例えば、使い所のない《突然の衰微》が腐っている場合は、あえて自軍の《タルモゴイフ》にプレイすることで、被害を抑えられます。
また、例えば親和に入っている《電結の荒廃者》や、メリーラポッドに入っている《臓物の予見者》など、能動的に自軍のクリーチャーを墓地に送ることが出来るカードがあれば、《死せる生》に対応して自軍のクリーチャーを全滅させることで、実質的にこちらの被害をゼロに抑えることも可能です。

注意点として、「続唱」が誘発した段階ですべて生贄にしてしまうと、相手は「《死せる生》をプレイしない」ことも選べるため、一方的にあなただけが被害を受けてしまいます。必ず《死せる生》のプレイに対応して生贄にしましょう。

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■「続唱」を巡る挙動についてのおさらい

「続唱」というキーワード能力は、非常に独特な動きをするため、初めて見る時には適切なタイミングが分かり辛いと思います。
実戦でリビングエンドを相手にしてる時に、よく言われるであろう言葉は「続唱を解決していいですか?」という言葉だと思いますが、ここで慌てず、適切なリアクションが必要となります。

まず、押さえるべき重要なポイントは

 ・「続唱」は、「続唱」を持つスペルをプレイした時に誘発する、誘発型能力

という点です。

これがどういう事かと言うと、例えば《悪魔の戦慄》をプレイされて「続唱」が誘発した状態で、《悪魔の戦慄》を《謎めいた命令》などで打ち消したとしても、「続唱」の能力は既に誘発してスタックに置かれているため、「続唱」の解決は行われ、《死せる生》をプレイされてしまいます。

ひとたび「続唱」が解決を始めると、みるみるうちにライブラリがめくれていき、何だかもう手遅れになったかのような錯覚を覚えますが「続唱」の効果で唱えたスペルがプレイされる際に、互いのプレイヤーが優先権を得ることができます。
もしあなたが《マナ漏出》などの打ち消しスペルを持っているとしたら、このタイミングで《死せる生》を対象にプレイすることによって、打ち消しを行うことが可能です。

注意しなければならない点として、「続唱」の解決前には、本来カウンターしなければならない《死せる生》はまだプレイされていないという事です。

相手が《暴力的な突発》などをプレイしてきて「続唱を解決していいですか?」と聞いてきたタイミングで、反射的に《マナ漏出》などをプレイしてしまうと、対象となるスペルが《暴力的な突発》しか存在せず、それを対象にしたとみなされ、打ち消せるはずだった《死せる生》を打ち消せなくなってしまう可能性もあります。
(※実際にそのタイミングでプレイしてしまった場合は、ジャッジの判断によって裁定が下されますが、PTQやグランプリなどの「競技」レベルの大会では厳格に裁定を下される可能性が高いです。そのため、日頃から適切なタイミングでプレイすることを常に心がけましょう。)

一方で、誘発型能力であることを逆手に取って、誘発型能力を打ち消す《計略縛り》などで「続唱」の効果を対象にすることで、打ち消すことが可能です。(この場合《悪魔の戦慄》は通常通りプレイされますが、「続唱」は解決されません。)

 文章ばかりでわかりにくくなってきたので、図にしてみました。


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■最後に

このデッキは極度に墓地に依存しており、サイドからも戦略を変更することも難しいため、どれだけ墓地対策が意識されているかによって強さが決定するといっても過言ではありません。

矛盾するようですが、上位陣にリビングエンドが結果を残したとしたら、皆が墓地対策を意識するため、リビングエンドを使うべき時では無いでしょう。逆に、リビングエンドが長い間結果を残せていない時は、リビングエンドを使うべきとき・警戒するべき時であると言えます。





日比野 泰隆

主な戦績
グランプリ横浜2013 5位

プロツアー“ドラゴンの迷路” 出場

グランプリ横浜2013でTOP8入賞を果たした名古屋のプレイヤー。
フォーマットや場所を問わず、精力的な活動を続けているプレイヤーである。

本人のブログ:電波な日記帳

過去の記事
「モダンへの誘い」 
モダンは誰もが主役になれるフォーマット!


「電波なモダンデッキ録」
第0回
第1回 感染
第2回 リビングエンド

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