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表西 幸次郎「千里の道も一歩から(仮)第3回」 
 
text by Kojiro Omonishi

 突然ですが、レガシーで最も使われているカードとは何でしょうか? 

《不毛の大地》?《思考囲い》?《石鍛冶の神秘家》?《タルモゴイフ》?《実物提示教育》?《精神を刻む者、ジェイス》?それとも《グリセルブランド》?

統計によると最も使われている呪文は《渦まく知識》だそうです。現在のレガシーで使用頻度順にカードを並べると、下記の様になります。



出典:MTG TOP8
引用元:http://www.mtgtop8.com/topcards?f=LE&meta=39(外部リンク)


 新エキスパンションが発売される度に流行廃りはあれどこの3つの順位は長らく変化していません。少なくともこの5年間ぐらいはずっとこの3種類のカードがトップ3を維持し続けています。

 勿論、「一番使われているカード」=「一番強いカード」とは言えません。しかしだからと言って何も根拠なく使われている訳ではないです。

 今回は《渦まく知識》の強さの秘密を考えていきながら、レガシーの環境を紐解いていきましょう。



Chapter1:《渦まく知識》の強さとは?


 レガシーを代表する強力な呪文と言われる《渦まく知識》ですが、カードのテキストを見ると、

渦まく知識/ Brainstorm (青)インスタント
カードを3枚引き、その後あなたの手札からカードを2枚、あなたのライブラリーの一番上に望む順番で置く。

と書いてあります。
カード一枚を使って3枚引いて2枚戻すという効果は、一見すると「手札が増えてないのにどうして強いの?」と感じます。
「0マナでカウンター」「1マナの土地破壊」と比べると、どうしたってインパクトに欠けますよね。しかし、実際はこれらのカードより《渦まく知識》が優先されています。


この謎について考えて行きましょう。

まずは、渦まく知識を使って出来る事が3つあります。




1:必要なカードを探す
あなたはMTGをプレイしていて、ドローに悩まされたことはありますか?

マナスクリューやマナフラッド、序盤に重いカードの引き過ぎや、キーカードを全く引けないなど様々なケースがあると思います。
これらは、MTGをプレイする上で宿命ですが《渦まく知識》はそんな宿命すら変えます。
土地が必要なら土地を引く。スペルが必要ならスペルを引く。
必要な時に必要な物を引く事が出来れば、それだけで「不運」によって負けてしまう事を減らせるわけです。

「土地が一枚引ければ勝ちなのに・・・。」
「全然スペル引かずに負けた!スペルくれー!」



このような場合に《渦まく知識》は問題解決の糸口になってくれます。
MTGとは、かくも運の要素の強いゲームですが、運によってぶれ幅のあるデッキの動きをスムーズな物にしてくれます。
《渦まく知識》のもたらす安定性こそ、青いデッキを支える縁の下の力持ちになっているのです。

それだけではなく、

・コンボデッキのコンボパーツ
・相手の場に出た脅威を対処できるカード
・逆に相手にとって脅威となるカード


などのキーカードを探す事も出来ます。



2:不要牌を有効牌に変える
引きすぎた土地、相手の手札が無い時の《思考囲い》、ANT(*編注1)に対しての《剣を鍬に》、石鍛冶を除去された後の《殴打頭蓋》・・・。
ゲームの展開や対戦相手のデッキの種類によって、不要牌は変化します。
この不要牌を渦まく知識とフェッチランドでライブラリーに押し込むことで擬似的なアドバンテージを得ることが出来ます。

(編注1:Ad Nauseam Tendrilsの略。《むかつき》で大量ドローしたマナ加速から《苦悶の触手》をプレイするストームコンボデッキ。)



分かりやすい例は、土地を2枚以上手札に抱えてる場合ですね。うろ覚えですが、実際に私が経験した盤面を載せます。




このような場合は、不要牌しかない手札が有効牌3枚に変わっているので実質3ドローと変わらないですよね?
渦まく知識がレガシー使用頻度No,1たる所以はこの擬似アドバンテージの強さにあります。



3:デッキトップに積み込む
本来ならデメリットでもあるこの効果にも意味があります。

・《思考囲い》から強力な手札を隠す
・《相殺》の誘発スタックで、デッキトップをいじる
・「仕組まれた奇跡」を仕込む
・デルバーを裏返す為のインスタントを積み込む


イニストラードが出てから、《秘密を掘り下げる者》や奇跡呪文の登場により、《渦まく知識》の有用性も上がりました。WUtR奇跡コンを使わない限りはあまり関係の無いことですが、頭の隅にとどめておきましょう。


この3つは、デッキ内における《渦まく知識》の担う役割でもあります。
デッキの潤滑油になり、キーカードを探しやすく、アドバンテージを得ることも出来る。
《渦まく知識》のもたらす効果はそれだけではなく、デッキ構築の幅も広げてくれます。よくある一差しというもので、特殊な状況下に必要なものを一枚だけデッキの中に入れることで、デッキの汎用性をあげようとする構築法です。
私の使うデッキで言うなら、《対抗呪文》と《呪文貫き》ですね。複数枚引くと弱いカードを一差しにして、そのカードが必要な場合は《渦まく知識》で探しにいき、不必要な場合はライブラリーの彼方に送り出します。
スタンダードやモダンでは効果が実感しづらい一差しも、《渦まく知識》があることで効果的に運用することが出来るわけです。


《渦まく知識》の有用性を説明していきましたがいかがでしょうか?

青というカラーを使うだけで強力な《渦まく知識》を使うことが出来るので、青の人気が衰えることはありません。正に、《渦まく知識》を使うのか?  使わないのか? という所からデッキ選択が始まっているといっても過言ではないわけです。
実際、大会に出ても青+他の色と言ったデッキに当たることが圧倒的に多いはずです。そんな中、他の青ユーザーと差をつける為には何が必要か?

《渦まく知識》を使いこなすことが出来るかどうか?にかかっています。

もし、《渦まく知識》を使うデッキを選択した場合、早く上達したいのなら「《渦まく知識》の使い方をしっかりマスターする」のが一番の近道です。

そのために、まずは初心者が陥りやすい罠を何個か紹介します。




Chapter2:初心者の陥りやすい罠


初めてRUGDelverを使った時、「このデッキ弱くね?」と思った方はいませんか?  かくいう私も最初はそう感じました。RUGDelverは渦まく知識の使い方が難しいデッキの一つですが、メタの上位のデッキを弱く感じてしまう時は、スタン・モダン・レガシーとどのフォーマットでも同じことが原因の場合が多いです。
つまり、デッキを使いこなせていないんですね。

RUGDelverの場合は、《渦まく知識》の使い方がそのままデッキの強さに直結するので、ここが下手だとデッキの強さを生かしきれません。

そこで、初心者が陥りやすい罠について説明します



1:土地を並べすぎる

どのデッキを使っていても、そのデッキに必要な土地の枚数は大体決まっています。この必要枚数以上に土地を並べてしまっても、いざ《渦まく知識》を引いた時に手札が無いという状態になってしまいます。
これでは、《渦まく知識》の不要牌を有効牌に変える効果も弱くなってしまいますよね? 
では、どれだけの土地が必要なのか?各デッキで見ていきましょう。

RUGDelver3枚:《タルモゴイフ》を出しつつ、《呪文貫き》や《もみ消し》を構えることが出来る

BUGDelver・WURDelver3~4枚:《真の名の宿敵》をプレイできるマナ域、呪文を構えたい場合は4枚置く

エスパー石鍛冶4~5枚:《精神を刻む者、ジェイス》や《殴打頭蓋》を素で出せる

WUtR奇跡コン5枚以上:ある程度の《天使への願い》の威力を確保するために5枚以上必要

SnT3マナ分~4マナ分の土地:コンボの場合は特殊なマナ加速もあるので、《実物提示教育》や《騙まし討ち》をプレイできる分の土地

各デッキでこれぐらいの土地があれば十分運用することが出来ます。これ以上の土地を置く時は、明確な目的が無いならやめておきましょう。

《Force of Will》を5マナでプレイする場合や、《呪文貫き》・《目くらまし》をケアする場合ですね。



2:シャッフル手段が無いのにプレイする

筆者の尊敬するライターのネタ蒔き氏は《渦まく知識》を「未来の前借り」と表現しました。これは的を得ていて、私も感銘を受けた表現なのですが、シャッフル手段が無い場合未来の前借りをしてもデッキトップの2枚が返済を迫ってきます。

これでは、渦まく知識をプレイしても3T後に自分が持っているはずの手札と一緒ですからね。
シャッフル手段が無くても《渦まく知識》をプレイする時は、

・《Force of Will》が無ければ負けてしまう
・ここで《稲妻》を引けなかったら苦しい試合になる


等の、せっぱ詰まったとき時だけ打つのが賢明でしょう。




3:必要なカードがわからないのにプレイする。

相手のデッキが特定出来るまでは《渦まく知識》は我慢した方が良いです。何故なら、必要なカードが分からないからです。
もし、相手のデッキがクロックパーミッション系なら、《目くらまし》や《不毛の大地》をケアするために土地が必要ですし、クリーチャーを除去するための《剣を鋤に》も必要になります。

でも相手のデッキがコンボならどうでしょうか?土地も除去も不要牌になってしまいますよね。
相手のアクション次第では、デッキを特定するのに時間がかかるときもあるので、必要なカードが判断できるまでは手札の選択肢を増やす為に《渦まく知識》をプレイすべきではありません。



4:手札が少ないのにプレイする
「手札無いけどトップから渦まく知識引いた!プレイします!」

これはだめですよね?
《渦まく知識》の強さは複数のカードを選べる所にあるので、状況が切羽詰ってない限りはプレイしません。

この四つの罠は、初心者だけでは無くレガシーをある程度プレイしている中級者でも引っかかっている人はいます。
これは、その人が下手だというわけではありません。なぜなら、《渦まく知識》のプレイングを困難にしているのが、上記のようなケースで《渦まく知識》をプレイしても結果としてうまくいってしまうことがあるからです。

「手札0から渦まく知識をプレイしたらジェイス引いてマウント取って勝ちました」

このような状況がずっと続けばいいですが、そう簡単に行かないのがMTGの難しさでもあり面白さでもあります。もし、あなたがレガシーでのステップアップを望んでいるのなら、《渦まく知識》をプレイする前に思考の渦に飛び込んで見てください。その時、あなたの選択肢は無限にある事に気付くでしょう。 
その中から正解を見つけ出せたなら、あなたが次のステップに上がったサインです。
《渦まく知識》をプレイする中級者・上級者の諸兄も、今一度考えてみてほしい。


では、この4つの罠を踏まえた上で前回の問題を見て行きましょう。



前回掲載した問題ですがレガシーでよくある場面です。このケースでは《渦まく知識》をプレイしないことが正解となるのですが、その理由は二つあります。



①必要なカードが分からない
上の様な状況ですとまだまだ相手のデッキを特定するに至りません。SNTかもしれませんし、RUGDelverやWURDelverとも考えられます。あるいはドロー操作でスタートを切ったANTかもしれません。



《Volcanic Island》、《思案》、《沸騰する小湖》はいずれも上記のデッキに入り得るカードです。
同じコンボであるSNTとANTは引きたいカードが似通っているので問題ありませんが、SNTとRUGDelverでは引きたいカードの種類に大きく違いがあります。

RUGDelverに《剣を鋤に》は頼もしい除去として機能しますが、SNTには一転無駄牌と化すでしょう。
逆にSNTに《Force of Will》は頼れる打ち消しとして機能しますが、《秘密を掘り下げる者》と《タルモゴイフ》を対処する分には《剣を鋤に》より効率の悪い対処手段になります。

この様に今どのカードを戻してもそれぞれに裏目が存在します。

つまり、「このゲームで最も必要なカード」がまだ分からないのです。当然そのままプレイしても、何を戻して何を手札に入れるべきか分かりません。


そして、ある意味これが最大の理由なのですが今のタイミングで必要なカードがありません。
既に手札の中に対戦相手の脅威から身を守るカードが十分にありますし、唯一欲しいゲームを進めるためのカード———《石鍛冶の神秘家》もこのターンに《渦まく知識》で見つけてもマナが足りないのでプレイ出来ません。

つまり、このターンは無理にマナを使って自分からゲームを動かす必要がありません。もっと後のタイミングでプレイすることで、《渦まく知識》はより効率の良い解答をもたらすでしょう。



②シャッフル手段がない
手札と盤面を見ると、現在のところシャッフル手段がありません。なので《渦まく知識》でせっかく有効牌を手に入れても後の2ターンに無駄牌を引くはめになります。これは先ほど述べたとおり、あまり意味が無いプレイになります。

この二つの理由から、《渦まく知識》をプレイしないが正解になります。
実は、少し抽象的な理由ですがもう一つだけプレイしない理由があります。



③受動的なデッキである
青白やエスパーカラーの石鍛冶は、相手が行動(アクション)をしてからこちらが行動(リアクション)する受動的なデッキです。その為、特に対処しなければいけない脅威が無い限りは待ち続けるのが正解の場合も多かったりします。 
これは、UWtR奇跡コンでも同じなので、この2タイプのデッキを使っているプレイヤーは頭の隅に留めて置いてください。

前回の問題解説をしていきましたがいかがだったでしょうか?
実際の試合では考える時間も短いので、時間短縮の為にケーススタディで覚えていきましょう。

次回は、何個かの例題を出しながら解説をしていきます。


表西 幸次郎
主な戦績
エターナルパーティー2013 優勝
GP北九州13 27位

関西レガシー界で、エスパー石鍛冶と言えばこの人。堅実なプレイングで勝ち星を重ねる強豪プレイヤー。
関西には彼の自宅である、「表西邸」で経験を積むプレイヤーも多く、虎の穴的な存在となっている。

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