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石田弘「テーロス—神々の軍勢シールド解説(まとめ)」
 
text by Hiroshi Ishida 


「テーロス—神々の軍勢シールド解説(前編)」
「テーロス—神々の軍勢シールド解説(後編)」
「テーロス—神々の軍勢シールド解説(実践編)」


 さて今回はシールド編の最終回です。
前回のプールから実際にPTQで構築したデッキ及び、その反省点を上げていきます。

前回のプールはこちらをクリック
sample deck
17land
9《平地/Plains》
8《山/Mountain》

17creature
1《炎輪のフェニックス/Flame-Wreathed Phoenix》
1《悪魔の皮の魂結び/Felhide Spiritbinder》
1《一つ目峠のサイクロプス/Cyclops of One-Eyed Pass》
1《国境地帯のミノタウルス/Borderland Minotaur》
1《ケラノスの嵐呼び/Stormcaller of Keranos》
1《槍先のオリアード/Spearpoint Oread》
1《クラグマの解体者/Kragma Butcher》
1《火飲みのサテュロス/Firedrinker Satyr》
1《ラゴンナ団の長老/Lagonna-Band Elder》
1《ヘリオッドの使者/Heliod's Emissary》
1《威名の英雄/Fabled Hero》
1《目ざといアルセイド/Observant Alseid》
2《アクロスの空護衛/Akroan Skyguard》
1《神に寵愛された将軍/God-Favored General》
1《アナックスとサイミーディ/Anax and Cymede》
1《アクロスの重装歩兵/Akroan Hoplite》

6spell
1《恐るべき気質/Fearsome Temper》
2《稲妻の一撃/Lightning Strike》
1《タイタンの力/Titan's Strength》
1《バネ葉の太鼓/Springleaf Drum》
1《存在の破棄/Revoke Existence》


■各プールへの評価



 強力なレアである《威名の英雄》と、使者シリーズの中でも攻撃を通すことにかけては最強の《ヘリオッドの使者》が目を引きます。

 2枚の《アクロスの空護衛》も良いのですが、白だけでは英雄的を誘発しづらいのが不安です。

 《存在の破棄》2枚は、サイドボードとして心強いカードです。

 



 生物が多くスペルが少なめのプールになっています。
強力な飛行生物である《蒸気の精》が2枚ありますので、テンポデッキを目指す際には良さそうです。
逆に高マナ域が弱く、バウンス系呪文も少ないので遅いデッキには合わなさそうです。

 



 一目見て採用に値しないプール。
実際の構築では時間が限られていますから、こういうすぐに切れる色があるのは楽です。

 




 強力なレア《悪魔の皮の魂結び》と神話レア《炎輪のフェニックス》が目を引きます。

 クリーチャーも低マナ〜中堅どころは揃っていますし、2枚の《稲妻の一撃》は魅力的です。

 まず採用したいカラーといえるでしょう。

 



 枚数自体が少ない上、プレイアブルでないカードが入ってしまっているのでデッキを組むに値しません。
これもすぐに切れるカラーです。

 

マルチカラー


 強力無比の《アナックスとサイミーディ》が目を引きます。赤はまず確定と言えるプールでしたので、ここから赤白が正当化されました。

 青黒のマルチカラー2枚も相当に強力なのですが、流石に黒が弱すぎてデッキを組むまでには至りません。

 そもそも《難破船の歌い手》と《静寂の歌のセイレーン》は強いとは言っても、流石に《アナックスとサイミーディ》相手では敵いません。

 



■構築したデッキに関して

 というわけで、多くの強力レアを使えるように組んだ赤白ビートダウンになりました。
英雄的クリーチャーも多く存在していますが、授与を含め、対象を取る呪文があまりないのはマイナスです。

 それでも空護衛は及第点の2マナ域ですし、《威名の英雄》や《アナックスとサイミーディ》はそもそも英雄的しなくても強力なクリーチャーです。



 《バネ葉の太鼓》はシナジーなしでは採用がためらわれますが、このデッキでは《悪魔の皮の魂結び》と《神に寵愛された将軍》という、強力な神啓クリーチャーが2体もいますのでコンボパーツとして採用しました。

 実際にこの組み合わせが揃った試合では負けていませんし、流石に有力な組み合わせです。

 《神に寵愛された将軍》は、能力は強力なものの、何らかのサポートが無ければ神啓誘発させることは難しいので、ちょうど噛み合ったプールでした。

  また一応、青マナを出すことで《ケラノスの嵐呼び》の能力が起動できます。

 

 このデッキの欠点としては、相手のボム生物に対応できない事と、後半戦が弱いことが挙げられます。

 《ネシアンのアスプ》などの大型生物で攻勢を止められてしまうと、そのままズルズルと負けてしまいます。

  もっともこのデッキは初速が早く、相手が少しまごついているようなら一気に勝負を決めてしまえる力があります。できるだけ短期決戦を挑めるよう、多少のアド損は無視して攻め続けるようなプレイングが正しいでしょう。

  《稲妻の一撃》が2枚もありますので、最終的に本体に打ち込むことも視野にいれてダメージレースをしていきます。

  また万一長引いてしまっても《恐るべき気質》や火力のトップドローなど、逆転の可能性が常にあるのは心強いです。



 組み間違いとしては、まずは明確なものとして《火飲みのサテュロス》の採用があります

  タフネス3以上のクリーチャーと相打ちが取れる可能性や、1ターン目に出せる可能性こそありますが、高速クリーチャー戦が主体のこの環境ではデメリットが大きすぎました。

  特にこの環境、授与でサイズアップした生物に対するチャンプブロックが大事になってくるのですが、それが出来ない《火飲みのサテュロス》は本当に弱かったです。

 レアだから入れればいいというものではありませんね……。ここは素直に《サテュロスの散策者》か《無謀な歓楽者》を入れるべきでしょう。



 他は結果論にもなってきますが、サイズが小さいので《ゴルゴンの首》も入れるべきだったかもしれません。《ネシアンのアスプ》で全員止まってしまいますからね。

 まぁ負け試合は首があったらどうにかなったのか、というとそんな試合は一回もなかったですが(笑)。

  《ゴルゴンの首》はダメージそのものは増えないので、無駄カードになる可能性があるのが怖くメインに入れることはしませんでした。

  同様に、強いカードではありませんが《邪悪退治》もメインで良かったかもしれません。

 効果に対してコストが重すぎるこのカードですが、そもそもメインボードで6マナ域がありませんから、採用も正当化されます。

  実際に緑系相手にはほぼサイドインしていたカードですが、逆に青白などに対しては無駄カードになってしまう恐れもありますので、メインインが正しいかどうかは難しいところです。

  土地に関しても、どうせドブン重視ならバネ葉もあるので16まで絞り込んでもよかったかもしれません。

  もっとも色指定も厳しいですしマナスクリュー=負けの環境ですから、個人的には怖いですが……。

 高速ビートというデッキは、結局はどこまでも噛み合いが求められるデッキなので、そんなに深く考えても仕方ないかもしれません。

 実際負けの一つは、相手にこちら以上にドブンされて瞬殺されたものですしね。

  どこかで当たりか引きが良ければTOP8もあったでしょう。







■大阪のプールから作ったデッキ

前回のプールはこちらをクリック
sample deck
18land
1《神秘の神殿/Temple of Mystery》
8《山/Mountain》
8《森/Forest》

15creature
1《黄金の木立ちの蛇/Snake of the Golden Grove》
1《加護のサテュロス/Boon Satyr》
1《ニクス生まれの狼/Nyxborn Wolf》
1《ネシアンの狩猟者/Nessian Courser》
1《ケンタウルスの武芸者/Swordwise Centaur》
1《旅するサテュロス/Voyaging Satyr》
1《サテュロスの道探し/Satyr Wayfinder》
1《レイナ塔の英雄/Hero of Leina Tower》
1《菅草の蠍/Sedge Scorpion》
1《野蛮な祝賀者/Wild Celebrants》
1《燃えさし呑み/Ember Swallower》
1《パーフォロスの使者/Purphoros's Emissary》
1《攻撃の元型/Archetype of Aggression》
1《槍先のオリアード/Spearpoint Oread》
1《ゼナゴスの狂信者/Fanatic of Xenagos》
2《ニクス生まれのお調子者/Nyxborn Rollicker》

6spell
1《狩人の勇気/Hunter's Prowess》
1《職工の悲しみ/Artisan's Sorrow》
1《蛮族の血気/Savage Surge》
1《ケラノスの稲妻/Bolt of Keranos》
1《マグマの噴流/Magma Jet》
1《タイタンの力/Titan's Strength》



■各プールへの評価


 スペルは有用ですが、クリーチャーのラインナップが微妙なので、メインカラーは厳しそうです。
《希望の幻霊》や《剥離》だけをタッチする構築もあるかもしれません。

 





 こちらも白同様、クリーチャーが少ない上に弱すぎます。
《航海の終わり》や《突然の嵐》はタッチに値するカードなので、意識しておくべきでしょう。

 





 やはり黒は微妙と言わざるを得ません。
《アスフォデルの灰色商人》や《絶望の偽母》は確かに強力なカードですが、それだけで黒を選ぶ理由にはなりません。

 





 レアクリーチャーもいますし、火力も2枚あります。
クリーチャーも授与やアンコモンがありますし、何よりしっかりと数があります。
他のカラーに比べて全体的にまとまっているので、有力なカラーと言えるでしょう。









 枚数も多く、性能も安定しています。授与が2枚あり、しかも1枚は強力なレアです。

 他にも《レイナ塔の英雄》、《狩人の勇気》という実戦級のレアカードを有しており、これも有力なカードプールと言えそうです。

 緑の魅力である大型生物はいませんし、かといって速度勝負の出来そうなラインナップでもないのは残念です。

 



マルチカラー


 《ゼナゴスの狂信者》は、ちょうど赤緑で色があっているのでいい戦力です。《地平線のキマイラ》も強力ですので、タッチでも使用する価値があります。





アーティファクト

 《戦いの柱》は、最低限ブロッカーとしての役割は期待できますが、やはり普通に考えて《ネシアンの狩猟者》の下位互換カードです。
攻めるデッキではあまり採用したいカードではないですが、枚数が足りない場合は穴埋めで入るかもしれません。



■構築したデッキに関して

 殆ど他カラーの選択肢が無いという形で、自然と赤緑のデッキになりました。
無難に纏まってはいますが負け筋は明確で、まずは大型生物に対して対策がまるでありません。《ネシアンのアスプ》一匹で全員ビタ止まりです。

 かと言って、そういった大型生物が出る前に勝負を決められるかというとそれも難しいです。こちらの速度域は序盤から速攻をかけられるほど早くはないので、相手のレアが出るまでゲームに付き合うことになってしまい、そうなると高マナ域の貧弱さで負けてしまいます。

  回避能力もありませんので、一度足が止まったらもう勝ち目は薄いですし、逆に相手の飛行を止める術もありません。 

 という訳で、ちょうど、名古屋のプールの下位互換のような感じのデッキになってしまっています。

 

 ぶっちゃけて言えば、勝利へのプランがぼやけている上にデッキパワーが低いわけです。
 実際二回戦で、このデッキ最高のドブンと言える、2ターン目《ケンタウルスの武芸者》→3ターン目《ゼナゴスの狂信者》→4ターン目《燃えさし呑み》、という動きを受け切られた時には「ああやっぱりなぁ」という感じでした。

 
反面、強みとしては各マナ域の安定感があり、相手が弱いデッキだったり、事故ったりした場合には安定して戦えるでしょう。

恐らくはもう一色タッチすべきでした。

 すでに赤も緑もダブルシンボルが要求されており、マナサポートも少ないのですが、それでもPTQでは全勝近い成績を求められるのですから、この程度のデッキパワーに甘んじずどん欲に勝てるデッキにすべきでした。

 PTQの目的を権利獲得と考えれば、予選6−2だろうが0−8だろうがTOP8に残れなければ同じことですからね。このデッキでは予選抜けはかなり難しいでしょうから、安定感を落としてでもタッチすべきでした。

 その場合、明確な弱点となる大型クリーチャー対策として、《突然の嵐》や《航海の終わり》がタッチできる青が有力でしょう。神秘の神殿で青マナを出すことも出来ますし、強力なマルチカラーの地平線のキマイラも入れることが出来ます。

 抜くのはカードパワーで劣る《ニクス生まれのお調子者》や、ハマった時には強いもののこのデッキでは真価を発揮しづらい《レイナ塔の英雄》あたりでしょう。







■最後に


 この環境に限った事ではありませんが、シールド戦というものに関して一番大事なのは、まずはプール内からデッキパワーが最強になる組み合わせを見つけ出す事です。

 そしてデッキ構築の段階で、どのような流れでゲームに勝っていくのか……おおまかに言えばスピードで攻めきるのか、受けてからパワーで巻き返すのか……それを意識し、実際のプレイの指針とすべきです。

 その上で環境ごとの特徴や注意点に留意してゲームに望むべきです。

 

 この環境は攻勢を受けきるのが難しく、強力なカードには対策が限られます。
 
 またコモンカード同士でも噛み合ってしまうとどうしようもない状況になり、そのまま負けてしまうことも多いです。

 そういった、努力やプレイングでどうにかなるものでない負けは、気にしても仕方ありません。

 ですが、それ以外で出来る事は、すべてやっておくべきです。ほんの僅かでも、勝率は上げられるだけ上げるべきなのです。

 思うにこの環境は、プレイングよりもデッキ構築の比重が大きいのではないか、と感じています。

 配られたカードプールの強弱はどうしようもありませんが、そこから本当に正しいデッキを組めるのか、勝てるデッキを組めるのかは間違いなくプレイヤースキルです。

 強いプールを貰った時には間違いなく勝てるデッキを組めるように、しっかりと準備しておくべきでしょう。

 

 最後に、神々の軍勢からとあるカードのフレイバーテキストを引用して終わりにしたいと思います。
皆さん、GP名古屋では一緒に頑張りましょう!



『その種子があなたの心に事前に埋め込まれていない限り、偉人となることは到底叶わないでしょう。』



 〜レイナ塔の英雄のFTより〜

 
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