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石田弘「テーロス—神々の軍勢シールド解説(後編)」
 
text by Hiroshi Ishida 



「テーロス—神々の軍勢シールド解説(前編)」
「テーロス—神々の軍勢シールド解説(実践編)」

「テーロス—神々の軍勢シールド解説(まとめ)」



■プレイング編

●授与のマナカーブは可変式

 これまで解説した通り、攻め側有利の環境ですのでテンポが大事になります。また受ける場合でも除去で受けるのではなくクリーチャーで受けるのが基本になります。
ですからテンポを意識し、クリーチャーのマナカーブはできるだけ綺麗に、できれば遅くとも3ターン目には動くべきです。

 ですが、デッキを軽く組みすぎてもパワー不足に陥ってしまいます。ライフ10点程度まで詰めたところでこの環境を代表する神コモン《ネシアンのアスプ》1枚で全員止まって負けてしまう、などという展開はよく見られます。

 ここで意識すべきなのが、授与カードの強さと柔軟性です。

 自分のデッキに重いカードが少ないなら、授与コストでプレイすることを念頭におきましょう。
逆にデッキ内に重いカードが多いなら、通常のプレイをすることを躊躇うべきではありません。



●ブッパ環境だからこそ、読める状況では相手の手札を読むべき

 授与というシステムの性質上、基本的にメインでフルマナ倒して殴りあう環境です。
除去の弱さから、構えていても損する環境なので、ブッパするプレイが正当化されます。



 ですが、そんな環境だからこそ、相手が構えている場合は読みやすいです。

 代表的な例は白含む4マナの《神聖なる評決》。他にも殴ってきた時の《戦識の武勇》《タイタンの力》《エレボスの加護》などは非常に読みやすい行動です。

 「まぁブロックして1枚使わせても1:1の取引だから……」という考えは、英雄的の前では危険です。コンバットで討ち取られた上に継続的な強化を許してしまいます。
これらのカードは、構えるためには相応のマナを必要とします。読める状況ではケアして相手に楽をさせないことは、基本中の基本です。


英雄的との組み合わせに注意!



 ただしここでも高レアリティカードのカードパワーには泣かされます。僅か1マナで戦況を一変させる《トリトンの戦術》やたったの3マナですべてを覆す《英雄の破滅》など、読みにくい上に決まった時の影響は絶望的です。



●ケアすればいいというものではない。不可能なものはケアする価値がない

 近代MTGの常識と化しているケアですが、もちろんできればするに越したことはありません。
ですが授与による高速の攻めが継続し、1ターンのダメージの重み、1点のライフの重みが大きいこの環境では、ケアせずにぶっ放すプレイングも時には大事ですし正当化されます。

「どうせバウンス持たれていたら負け」「どうせ授与をトップで引かれたら負け」だったら待たずに何も持っていないことにかけて全員アタックが正解、という状況は多いです。



●最後の手段!?  弱プールだからこその後手!

 さてこの環境、弱いプールは本当に弱く、相手の攻勢は止められないしダメージレースでも勝てないし……とまったく勝ち目がありません。
そもそもこちらが先手だとしても、綺麗に組まれた強いビートデッキに対し、ドブンされた場合止めるのは不可能なのです。



 そんな時はどうするか?

 答えは簡単、勝てないなら、相手に負けてもらうしかないのです。



 自ら後手を取ることにより相手に先手を与え、マナトラブルやマリガンを期待します。普通に回ってしまったらどうせ勝てないのであれば、この事故に望みをかけたほうが勝利の可能性が高くなる、という寸法です。
とは言えそうそう上手く行くはずもなく、多くは負けるでしょう。しかしどうせ弱いプールでは勝てないので、だったらこういう賭けに出てみるのも悪く無いです。



 実際に自分も、どうしようもなく弱いプール(三色均等の上、2マナ以下のカードが1枚しかない。重い部分もせいぜい《黄金の木立の蛇》が最強というプール)では、毎回後手をとって相手に事故ってもらい5−2という成績で終わりました。まともなMTGやった試合は一回だけですが、これも今環境の真実の一つです。



●全ては噛みあい、運も大事

 身も蓋もない話ですが、この環境はかなり運に左右されます。


1枚で勝てるレアを引き込む運。

試合でマナスクリューしない運。

英雄的が上手く噛み合う運。

そして、相手が事故って試合に勝てる運。



テーロスの神々に愛された者こそが、最後には勝利を掴む……のかもしれません。




■各カラーの評価と組み合わせ

 もちろん、どの色が強いかは貰ったカードプール次第です。ですが概ねの評価として、各カラーについてまとめていきます。
要注目カードに関しても述べていきます。



・白


 非常にコンセプト色の強い、英雄的を活かすべきカラーになっています。

 授与に関しても《めざといアルセイド》や《希望の幻霊》はコモンながらゲームを支配するレベルのカードです。
カラー自体が英雄的を推しているので、英雄的をバックアップするコンバットトリックカードも多いです。白を相手にした場合、《戦識の武勇》や《神々の思し召し》には常に注意を払うべきでしょう。
また除去の弱いテーロスにおいて、白はかなり高レベルな除去を持ったカラーです。特に《神聖なる評決》はこの環境は貴重なインスタントの確定除去です。
噛み合った際のビートの強力さや、インスタントでのコンバットトリックにより、相手にした場合には常に気が抜けないカラーです。

 高マナ域の生物は貧弱なので、組むなら速攻系のデッキになります。そしてできるだけスムーズに英雄的を誘発できるように、他色のプールとの相性はしっかりと吟味すべきです。



・青



 青はこの環境ではもっとも万能なカラーだと思います。

 生物の質が高く、コモンだけであらゆるマナ域に飛行生物を用意できます。授与に関しても最強コモンの《雨雲のナイアード》は言うに及ばず、《ニクス生まれのトリトン》も同サイクルの中では最強です。

 そして青には、この環境でも極めて稀な劣勢を覆すカードが存在します。

 除去が弱く、重く設定されているこの環境でも、なぜか軽いままの各種バウンスや、授与というシステムを否定する《突然の嵐》。これらはコストも手頃でインスタントであることも相まって攻防に渡って活躍します。

 クリーチャーもスペルも充実しているので、プール次第で早いデッキから遅めのデッキまで、様々なデッキが組める可能性があります。
その万能性から、どのカラーと組み合わせても活躍できるカラーです。色指定が優しいので2色目やタッチでも運用しやすいのも魅力でしょう。



・黒


 神々の軍勢で大幅に弱体化した、環境最弱カラー。

 コモン生物がことごとく弱く、除去も弱すぎで場を支えられません。
またいわゆる「プレイアブルでない」カードが多く、殆どの場合メインデッキを組むには至りません。

 ただし、反面アンコモンやレアには驚異的なボムが多く存在しています。

 《形見持ちのゴルゴン》はレアや神話にも匹敵するカードパワーですし《エレボスの使者》の破壊力は驚異的です。《エレボスの鞭》や《忌まわしき首領》といった1枚で勝てるゴッドレアの支配力は言うまでもありません。
これら強力な高レアリティカードを複数枚引いた場合、上手く使えそうなら使用を考えてもいいかもしれません。
ですがその場合でも、黒のカードは色指定の濃いものが多く、一色目にしなければ事故率が跳ね上がります。

 その辺りも相まって、非常に使いにくいカラーです。



・ 赤


 テーロスでは最弱でしたが、神々の軍勢の参入により、もっとも強化されたカラーです。

 コモンでありながら強力な除去である《槌の一撃》や、「クソゲー」と呼ばれるイージーウィンを生み出す《恐るべき気質》が目玉ですね。
生物は他色と比べてそこまで強力というわけではないですが、低マナから高マナまで一通りは揃っています。

 怪物的、英雄的どちらも含まれており、青同様に速度域はプール次第です。

 どんなカラーと組み合わせても合う万能カラーですが、4マナ生物の色指定が濃いのには要注意です。



・緑

 シールドではもっとも安定している強カラーと評価されます。

 実際、シールド戦での緑との遭遇率は高く、3人中の2人が使っているぐらいの印象です。
その強さの理由は簡単で、コモンカードが質・量ともに最高レベルだからです。1マナから6マナまですべてプレイアブル、しかも強力な生物が目白押しです。
特に高マナ域の巨大生物の強さは流石に緑の面目躍如といったところで、《ネシアンのアスプ》《巨体の狐》はコモンながら強力なフィニッシャーとなってくれます。

 大型生物が強いので格闘系除去も使いやすく、エンチャント除去がクリーチャー除去を兼ねるので普段の緑よりも対応力が高く、この環境では貴重な「受け」のデッキも組みやすいです。
神々の軍勢の参入により、低マナからダブルシンボルを要求されるようになった点は留意すべきです。もっとも緑は一色目に持って行きやすいのであまり問題にはなりませんが、白緑で英雄的デッキを組む際にはどちらもダブルシンボルを要求されやすいので要注意です。

 また緑には《ナイレアの存在》《ケイラメトラの好意》といった多色サポートカードが存在していますので、3色目のタッチが容易なのも魅力でしょう。



・多色カード

 この環境のマルチカラーカードはすべてがアンコモン以上ですが、高レアリティに見合ったカードパワーを誇っています。

 使用カラーに迷ったら、強力な多色カードを使える組み合わせを選ぶのも手ですし、タッチカラーで使用する事も検討すべきでしょう。
特にメインでは使いづらい黒絡みのマルチカラーカードは強く、青緑のクリーチャーデッキにタッチで採用された《難破船の歌い手》などは凄まじい支配力を発揮します。



・アーティファクト・土地

 好きなマナを出せる《乳白色の一角獣》は、純正の英雄的でも無い限りほぼ入るありがたいカードです。
遅いデッキの場合は《メレティスの守護者》のメイン採用もありえるかもしれませんし、少なくともサイド後では意識すべきカードです。
《未知の岸》は3色以上のデッキではありがたいカードですが、純正2色の場合は逆にテンポが犠牲になってしまうリスクもありますので、デッキと要相談です。

 またレアの「神殿」サイクルは基本的に入れ得です。片一方しか色があっていなかったとしても、事故を緩和し有効牌に辿りやすくなる占術ランドを入れない理由はありません。







■練習用プール



 最後に、実際に自分がPTQで使用したプールを紹介して終わろうと思います。

 これは長野でのPTQで使用し予選ラウンド8−0という好成績を出したプールですが、流石に強力、かつ素直なプールでした。
皆さんも是非、練習として組んでみてください。サイドプランまで考えて作るとより効果的でしょう。
次回はこのプールで作ったデッキの紹介と、各カードの取捨選択の理由を解説していく予定です。

シールドプール

2《グリフィンの夢掴み/Griffin Dreamfinder》
1《エイスリオスの学者/Scholar of Athreos》
1《目ざといアルセイド/Observant Alseid》
1《乗騎ペガサス/Cavalry Pegasus》
2《アクロスの空護衛/Akroan Skyguard》
1《恩寵の重装歩兵/Favored Hoplite》
1《鋤引きの雄牛/Yoked Ox》
1《神聖なる評決/Divine Verdict》
1《異端の輝き/Glare of Heresy》
1《解消の光/Ray of Dissolution》
1《ヘリオッドの選抜/Chosen by Heliod》
1《くぎ付け/Hold at Bay》
1《岩への繋ぎ止め/Chained to the Rocks》
1《神々の思し召し/Gods Willing》



1《空想の元型/Archetype of Imagination》
1《潮流の合唱者/Chorus of the Tides》
1《水跳ねの海馬/Breaching Hippocamp》
1《ニクス生まれのトリトン/Nyxborn Triton》
1《海の神、タッサ/Thassa, God of the Sea》
1《精神奪い/Mindreaver》
1《前兆語り/Omenspeaker》
1《海神の復讐/Sea God's Revenge》
2《突然の嵐/Sudden Storm》
1《無効化/Nullify》
1《層雲歩み/Stratus Walk》
1《阻まれた希望/Stymied Hopes》
1《撤回のらせん/Retraction Helix》
1《迷宮での迷子/Lost in a Labyrinth》
1《無効/Annul》


1《湿原霧のタイタン/Marshmist Titan》
1《モズのハーピー/Shrike Harpy》
1《モーギスの戦詠唱者/Warchanter of Mogis》
1《蘇りしケンタウルス/Returned Centaur》
1《強欲なハーピー/Insatiable Harpy》
1《オドゥノスの黒樫/Black Oak of Odunos》
1《モーギスの匪賊/Mogis's Marauder》
1《悪魔の皮の喧嘩屋/Felhide Brawler》
1《一口の草毒/Sip of Hemlock》
1《死の国の重み/Weight of the Underworld》
1《忌まわしい変身/Grisly Transformation》
1《エレボスの催促/Claim of Erebos》
1《目抉り/Eye Gouge》

2《ファラガックスの巨人/Pharagax Giant》
1《燃えさし呑み/Ember Swallower》
1《モーギスの狂信者/Fanatic of Mogis》
1《国境地帯のミノタウルス/Borderland Minotaur》
1《一つ目峠のサイクロプス/Cyclops of One-Eyed Pass》
1《サテュロスのニクス鍛冶/Satyr Nyx-Smith》
1《怒血のシャーマン/Rageblood Shaman》
1《炎語りの達人/Flamespeaker Adept》
1《死呻きの略奪者/Deathbellow Raider》
1《イロアスの神官/Priest of Iroas》
1《落岩/Boulderfall》
1《パーフォロスの激怒/Rage of Purphoros》
1《恐るべき気質/Fearsome Temper》
1《稲妻の一撃/Lightning Strike》
1《槌の一撃/Fall of the Hammer》
2《天啓の嵐/Epiphany Storm》


2《巨体の狐/Vulpine Goliath》
1《ネシアンのアスプ/Nessian Asp》
1《フィーリーズ団のケンタウルス/Pheres-Band Centaurs》
1《セテッサの星砕き/Setessan Starbreaker》
1《フィーリーズ団の精鋭兵/Pheres-Band Tromper》
1《セテッサの誓約者/Setessan Oathsworn》
1《ニクス生まれの狼/Nyxborn Wolf》
1《葉冠のドライアド/Leafcrown Dryad》
2《サテュロスの享楽者/Satyr Hedonist》
1《宿命的介入/Fated Intervention》
2《職工の悲しみ/Artisan's Sorrow》
1《切り裂く風/Shredding Winds》

マルチ
2《キオーラの追随者/Kiora's Follower》
2《蒔かれたものの収穫/Reap What Is Sown》


土地・アーティファクト
1《ゴルゴンの首/Gorgon's Head》
1《豊潤の神殿/Temple of Plenty》
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