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岡本桂多のKill them All!第8回デッキを、作る(《老いざるメドマイ/Medomai the Ageless》編) 
 
text by Keita Okamoto 


 ついにテーロスが発売になりましたね!

 テーロスでは伝説のクリーチャーやここ最近のエキスパンションでは恒例の統率者戦を意識したカードが多く、更なる盛り上がりが期待できそうです。

 今回はテーロスに収録された多くの伝説のクリーチャーの中からこの一枚をピックアップしてみたいと思います!





「老いざるメドマイがプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、このターンの後に追加の1ターンを行う。」

 この能力には思わず目を疑ってしまいますね。もちろん「老いざるメドマイは追加ターン中には攻撃できない。」というちゃんとしたデメリットもついてきます。


 今回は、実際に統率者戦のデッキを1から組む時にどういう事に気をつけているかをこの《老いざるメドマイ/Medomai the Ageless》を統率者としてデッキを組むケースを例にして解説していきたいと思います。とはいえ、デッキ構築の手順は当たり前な事が多いので、基本を追いつつの解説になります。

 また、今回は所謂「ガチ」か「カジュアル」かで言うと「カジュアル」な視点、環境でデッキを構築していきます。また、なるべくシングル価格の相場が3000円を超えるようなカードは使わないようにして構築してきます。



1.統率者or固有色を決める


 今回は《老いざるメドマイ/Medomai the Ageless》でデッキを組む所からスタートしているのでこの手順はスキップ出来ます。
伝説でないクリーチャーや、クリーチャーでないカードをどうしても使いたい!という動機で組む場合は使う色を決める所から始まります。




2.どういうコンセプトのデッキにするかを考える

 まずデッキコンセプトを考えるのは統率者戦に限った事ではないですね。
統率者戦では勝ち手段としては

・無限コンボだけで勝つ

・統率者で殴って統率者ダメージで勝つ

・統率者ダメージではなくライフを削って勝つ


の3パターンが主なものになります。下の二つの場合でも、無限コンボをサブプランとして採用するか否かも関わってきます。

 また、このステップと次の3.のステップは交互に行き来しながら構築していく事も多々あります。

 今回は《老いざるメドマイ/Medomai the Ageless》を中心にデッキを組むという目標で、《老いざるメドマイ/Medomai the Ageless》だけで統率者ダメージで勝つ事は困難なので3番目の「統率者ダメージではなくライフを削って勝つ」というコンセプトに、「無限コンボをサブプランとして採用する」というメニューで行きます。




3.統率者の特徴を細かく見ていく→統率者と相性の良いものを探し出す

 このステップは一言で言ってはいますが、統率者毎に異なってくる部分なので一概には説明できません。
今回の《老いざるメドマイ/Medomai the Ageless》の場合は

色:青と白。打消しとプロテクション付与があるため統率者本体を守りやすい→「統率者を守るカード」

クリーチャータイプ:スフィンクス。特別な部族シナジーは無いので部族で固める必要は無い。

パワー・タフネス:4/4。普通に統率者ダメージで勝つためには6回も攻撃を通さないといけないので統率者ダメージではなく、99枚のデッキに入れたクリーチャーで殴り勝つべき→いわゆる「殴り値の高いクリーチャー」

能力1:飛行。完璧とは言わないが十分な回避能力を持っているため、無理に回避能力を持たせるカードを多く採用する必要は無い→「回避能力を持たせるだけのカードは採用しない」




能力2:「老いざるメドマイがプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、このターンの後に追加の1ターンを行う。」。
誘発型能力→《ストリオン共鳴体/Strionic Resonator》



 戦闘ダメージを与える必要がある→「速攻を持たせるカード」「回避能力を持たせるカード」。ただし能力1があるので回避能力を持たせるだけのカードは不要

 複数回戦闘ダメージを与えると何度も誘発する→「二段攻撃を持たせるカード」「追加ターンを得るカード」「追加の戦闘フェイズを行うカード」。ただし能力3があるので追加ターンを得るカードは不要で、青と白では追加の戦闘フェイズだけを得るカードは存在しない。




能力3:「老いざるメドマイは追加ターン中には攻撃できない。」→追加ターンを得るカードを入れてもあまり有効ではない


 《老いざるメドマイ/Medomai the Ageless》に関してはこれぐらいでしょうか。比較的単純な誘発型能力だけなのであまり見ていく所はありませんでしたね。ではそれぞれの項目に当てはまるカードをピックアップしていきましょう。

 この時、可能ならばメモ用紙などに実際に書いていく事をおすすめします。ピックアップしていく時に、その役割とかみ合う別の役割を思いついたらどんどん項目を足していきましょう。実際に現実的かどうかはすぐに判断をせずにどんどん羅列していきます(以下では文量の都合上判断する所まで進めてしまっています)。

 この方法は、ブレインストーミング法と呼ばれる会議方式で、とにかく色んなアイディアを場に出して後でくっつけていく事になり、統率者戦のデッキを作るのに非常に適しています。本来は複数人の会議でやるものですが、今回は一人でやっていきます。




「統率者を守るカード」

《ミジウムの外皮/Mizzium Skin》、《信仰の盾/Faith's Shield》、《使徒の祝福/Apostle's Blessing》、《誤った指図/Misdirection》、《白鳥の歌/Swan Song》、《神々の思し召し/Gods Willing》



 プロテクションを付与するカードはブロックされなくするという追加効果もあるので「回避能力を持たせるカード」としての役割も持ちます。




「殴り値の高いクリーチャー」

 つまり打点の高いクリーチャーですね。
《セラの高位僧/Serra Ascendant》、《刃砦の英雄/Hero of Bladehold》、《マイアの戦闘球/Myr Battlesphere》

 この3枚はこの色の組み合わせで使える打点の高いクリーチャーです。他にも単純にサイズの大きいクリーチャーや二段攻撃を持っているクリーチャーを採用するのも良いでしょう。




「速攻を持たせるカード」

 青と白にはあまり速攻を持たせるカードは無いので、アーティファクトと土地に頼らざるを得ません。
《稲妻のすね当て/Lightning Greaves》、《速足のブーツ/Swiftfoot Boots》、《執念の剣/Sword of Vengeance》、《山賊の頭の間/Hall of the Bandit Lord》



 この4枚はデッキをゆがませる必要もなく、速攻を持たせる以外にもちゃんと仕事をしてくれるカード達なので採用しましょう。

 後はどうしても速攻を持たせたい場合は《闊歩するものの装具/Strider Harness》、《ヴァルカスの指輪/Ring of Valkas》、《アクローマの記念碑/Akroma's Memorial》も採用してもいいですが、今回は速攻を持たせる事よりも《老いざるメドマイ/Medomai the Ageless》を守るカードや二段攻撃を持たせるカードの方を重視したいので、これらは見送る事にします。




「二段攻撃を持たせるカード」

 《老いざるメドマイ/Medomai the Ageless》の誘発型能力を2度誘発させるだけではなく、パワーがそこそこあるだけのクリーチャーでも一瞬で強力なフィニッシャーになってくれるため、重要な要素になります。可能な限り採用しましょう。

《群れの統率者アジャニ/Ajani, Caller of the Pride》、《熟達した戦い/Battle Mastery》、《銀刃の聖騎士/Silverblade Paladin》、《炎叫びの杖/Fireshrieker》、《真実の確信/True Conviction》、《一枚岩の努力/Concerted Effort》



 《一枚岩の努力/Concerted Effort》を採用する場合は素で二段攻撃を持っている《ミラディンの十字軍/Mirran Crusader》や《ドラグスコルの肉裂き/Drogskol Reaver》も合わせて採用すると効果的でしょう。

 また、追加ターンを得る、二段攻撃を持つ≒攻撃回数が増えるという事で、「攻撃回数を稼ぐ事でより強力になるカード」も採用しましょう。




《タッサの二叉槍/Bident of Thassa》、《ドラグスコルの肉裂き/Drogskol Reaver》、《沿岸の海賊行為/Coastal Piracy》、《風読みのスフィンクス/Windreader Sphinx》、《奪い取り屋、サーダ・アデール/Thada Adel, Acquisitor》、《記憶の仮面/Mask of Memory》、《嵐霊/Sturmgeist》、《タッサの使者/Thassa's Emissary》

 このカード群は、攻撃に参加するもしくは戦闘ダメージをプレイヤーに与える度にドローが出来たりアドバンテージにつながったりするので、非常に相性が良いカードたちです。




《霜のタイタン/Frost Titan》、《太陽のタイタン/Sun Titan》

 《老いざるメドマイ/Medomai the Ageless》の追加ターン中に相手のライフを削りつつブロッカーをどかす《霜のタイタン/Frost Titan》とアドバンテージを稼ぐ《太陽のタイタン/Sun Titan》はこのデッキのメインアタッカーを任せるには十分でしょう。《老いざるメドマイ/Medomai the Ageless》が無くともこれらのクリーチャーは単体で強いので、いつでも頼りになります。




・採用可能な無限コンボ
 《老いざるメドマイ/Medomai the Ageless》は割と簡単に無限コンボが出来そうで出来ないちゃんとしたデザインになっています。

《ヴォルラスの多相の戦士/Volrath's Shapeshifter》+《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》or《ひっかき爪/Scrabbling Claws》or《墓地のシャベル/Graveyard Shovel》+墓地の一番上に《老いざるメドマイ/Medomai the Ageless》

というコンボが最も現実的なものです。

《ヴォルラスの多相の戦士/Volrath's Shapeshifter》で攻撃に参加します。この時に《老いざるメドマイ/Medomai the Ageless》のコピーになっていてもいなくてもかまいません。

無事に攻撃が通ったら追加ターンに入ります。

追加ターンの戦闘フェイズに入る前に、《ヴォルラスの多相の戦士/Volrath's Shapeshifter》の起動型能力で手札を1枚捨て、墓地の一番上のカードを《老いざるメドマイ/Medomai the Ageless》ではないようにします。そうすると《ヴォルラスの多相の戦士/Volrath's Shapeshifter》は追加ターン中でも攻撃に参加できるようになります。

攻撃に参加した後で、《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》などの「墓地のカードを1枚追放する」カードで、自分の墓地の一番上のカードを取り除いてやれば無事に攻撃している状態の《老いざるメドマイ/Medomai the Ageless》に変身する事が出来ます。

1から4を繰り返せば無限ターンに入れるので、《老いざるメドマイ/Medomai the Ageless》で全員殴り倒すもよし、他のクリーチャー群で殴り倒すもよし、はたまた《アゾールの雄弁家/Azor's Elocutors》で特殊勝利を狙ってもよし、という事になります。


 墓地を掃除するアーティファクトはそれ単体でもちゃんと墓地対策として働いてくれるのであまり腐る事がありません。


 《ヴォルラスの多相の戦士/Volrath's Shapeshifter》は非常に癖があるものの、トリッキーな挙動ゆえに相手をかく乱させる事が出来るので、僕の以前のコラム「コンボを制するものは統率者戦を制する」の評価基準で評価すると

A:コンボパーツの枚数:★★★★★(統率者込みの3枚コンボ。2枚のうち1枚は替えがきくのでそろいやすい

B:無限パーツの汎用性:★★★★☆(墓地対策をしつつ無限コンボにつなげる事が出来るパーツを含むため)

C:対処のしづらさ:☆☆☆☆☆(4/4のクリーチャーの攻撃を阻止するだけで良いので決まりづらい。しかも一瞬とはいえ《ヴォルラスの多相の戦士/Volrath's Shapeshifter》が0/1になるタイミングが存在してしまうのでクリーチャー除去に対する耐性は皆無)

D:墓地対策耐性:★☆☆☆☆(墓地の《老いざるメドマイ/Medomai the Ageless》を除外されると止まってしまうが、統率者なのでまた唱えて墓地に落とせばもう一度挑戦できる)

 ということで20点中10点のコンボです。

 点数自体は低いですが、統率者を《老いざるメドマイ/Medomai the Ageless》にする理由となるコンボなのでなるべく外さないようにしたいですね。

 このコンボを成功させるためには、《ヴォルラスの多相の戦士/Volrath's Shapeshifter》と墓地掃除アーティファクトを探してくる必要があります。

 青と白ではクリーチャーを探す手段が乏しく、《シタヌールのフルート/Citanul Flute》、《激浪の多相の戦士/Riptide Shapeshifter》ぐらいしかありません。

 その反面アーティファクトを探すのは容易で、今回は《求道者テゼレット/Tezzeret the Seeker》、《粗石の魔道士/Trinket Mage》、《加工/Fabricate》を入れましょう。



4.一旦デッキの枚数を確認する。
 やりたいこととそれをサポートするカードを羅列していった後で、一度頭を冷やして実際のデッキの枚数にフィットさせる事が出来るか確認しましょう。

 今まで紹介したカードを全て詰め込むと以下のようなリストになります。


Sample Deck
General
《老いざるメドマイ/Medomai the Ageless》

land
《山賊の頭の間/Hall of the Bandit Lord》

creature
《セラの高位僧/Serra Ascendant》
《刃砦の英雄/Hero of Bladehold》
《マイアの戦闘球/Myr Battlesphere》
《銀刃の聖騎士/Silverblade Paladin》
《ミラディンの十字軍/Mirran Crusader》
《ドラグスコルの肉裂き/Drogskol Reaver》
《風読みのスフィンクス/Windreader Sphinx》
《奪い取り屋、サーダ・アデール/Thada Adel, Acquisitor》
《嵐霊/Sturmgeist》
《タッサの使者/Thassa's Emissary》
《霜のタイタン/Frost Titan》
《太陽のタイタン/Sun Titan》
《ヴォルラスの多相の戦士/Volrath's Shapeshifter》
《アゾールの雄弁家/Azor's Elocutors》
《激浪の多相の戦士/Riptide Shapeshifter》
《粗石の魔道士/Trinket Mage》
spell
《ミジウムの外皮/Mizzium Skin》
《信仰の盾/Faith's Shield》
《使徒の祝福/Apostle's Blessing》
《誤った指図/Misdirection》
《白鳥の歌/Swan Song》
《神々の思し召し/Gods Willing》
《加工/Fabricate》
《ストリオン共鳴体/Strionic Resonator》
《稲妻のすね当て/Lightning Greaves》
《速足のブーツ/Swiftfoot Boots》
《執念の剣/Sword of Vengeance》
《炎叫びの杖/Fireshrieker》
《記憶の仮面/Mask of Memory》
《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》
《ひっかき爪/Scrabbling Claws》
《墓地のシャベル/Graveyard Shovel》
《シタヌールのフルート/Citanul Flute》
《熟達した戦い/Battle Mastery》
《真実の確信/True Conviction》
《一枚岩の努力/Concerted Effort》
《タッサの二叉槍/Bident of Thassa》
《沿岸の海賊行為/Coastal Piracy》
《群れの統率者アジャニ/Ajani, Caller of the Pride》
《求道者テゼレット/Tezzeret the Seeker》

 ここまでで土地を除くと40枚です。


 土地は大体35枚ぐらいが平均なので35枚入れるとすると、統率者を除いてあと24枚カードを入れるスペースがあります。


 ここから先は、極端に言えば好きなカードで埋めていくだけです。


 ただし、デッキとして円滑にゲームを進められるように、マナ加速アーティファクト、ドロー呪文、妨害用の単体除去呪文、全体除去呪文などを意識して採用するようにしましょう。


 今回の青と白のデッキではマナアーティファクトを6枚前後、ドローやドロー操作系統の呪文を6枚前後、クリーチャー除去(バウンスも含む)を4枚前後、全体除去を2枚、カウンター呪文を3枚前後入れれば後は(といっても数枚ですが)好きなカードを入れましょう。


 統率者戦のデッキというと、統率者を除いても99枚のデッキを組むということで、一からデッキを組み上げるのは難しそうだからといって敬遠しがちな人が多いかと思います。


 しかし実際は色の配分はともかく土地を35枚前後、マナサポートカード、ドロー操作系の呪文、単体除去や全体除去などを入れていけば55枚~60枚ぐらいまでは埋まってしまいます。そうすれば半分以下の39枚~44枚のカードを探すだけでデッキは完成です。

この枚数が多すぎて途方にくれてしまう人もいれば、逆に少なすぎて上手く一つのデッキに収まらないと苦悩する人もいると思います。


 多すぎると思う人も少なすぎると思う人も、行き詰ってしまったらとりあえず99枚の紙束をでっち上げて、誰かと対戦しましょう。


 何が不要なのか、何が本当に必要なのかは実戦を経験しないとわからない部分です。正直な所、僕自身でもたった今作った《老いざるメドマイ/Medomai the Ageless》のデッキがちゃんと想定通り動いてくれるかもわかりません。しかしそれが統率者戦の難しい所でもあり、面白い所でもあります。


 自分がやりたい事と統率者が出来る事を統率者と相談し合ってデッキを組む楽しさを見つけていただければ、あなたも無数にある統率者戦の楽しみのうちの一つを理解していただけると思います。


 ぜひ一度お気に入りの統率者でデッキを組んでみてください。

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