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BMO Legacy メタゲームブレイクダウン/そして強くなるために
 
text by Ryousuke Sakamoto 


強さとは何か?

それはマジック・プレイヤーの永遠の課題の一つである。


高級で強力なカードを詰め込んだデッキ?

…否、それはただの「札束」であって「強さ」ではない。(因みに私は札束デッキが大好きだ)



相手を瞬殺すること?

それも違う。それはただの「速さ」だ。

無論、《ゴブリンの放火砲/Goblin Charbelcher》デッキが栄冠を手にしたことも多々あるだろう。
しかし《Force of Will》の前に空しく散って行った戦士たちがその何倍も、何十倍もいることから目を背けてはいけない。




禅問答はここまでにして結論を言おう。

答えは「勝ったデッキ・勝った人」である。



強いデッキが勝つのではない。
勝ったデッキは強いのだ。

強い人だって勝てるとは限らない。
しかし勝った奴は強いのだ。





さて、いい加減本題に入りましょう。

…ということで…


日本全国1,000,000人のレガシー・ジャンキーの皆様、お待たせしました!先日遂に開かれた日本初の超・大型賞金制トーナメント、その名も”Big Magic Open”。

 今日はその中で栄光を掴んだデッキ…ではなく、「よく勝ったデッキ」という視点で結果を分析してみます。

 いつだって数字は嘘をつかないのだ。







1.はじめに《一同集結!/To Arms!》

 先ずはBMOレガシーに出場した全デッキをご覧あれ。


BMOレガシーデッキ分布


全体の5%以上を占めたのは、
・BUG Delver
・SnT
・Jund
・UW/r Miracle
・UW/b Blade
・RUG Delver
の6種となりました。
いずれも扱いやすく、安定感があり、明確なキラーカードが存在しないデッキばかりです。長丁場では、こういうデッキの地力のようなものが魅力的、ということでしょう。

 では、そういうデッキが強いのか?と言うと…

 ここで、次にトップ16だけに視野を絞ってみましょう。


Top16デッキ分布



…はい、最大手のBUG Delverはどこへ…?
そして、絶対数は少なかったデッキ、特にLandsとDredge、Goblinの登場が目を引きます。数が少ないのに入賞するなんて!それはとっても強いデッキなのでしょう!

 …ちょっと待って欲しい。これまた早計です。

 言うまでもなく土地単や発掘、ゴブリンと言ったデッキは「手に負えない」パターンを持つデッキであり、いつでも勝てるデッキという訳ではないでしょう。(メタの間隙をついて優勝を狙うには良い選択ともいえます)

 では、「勝てるデッキ」の指標とは何か?

 これは海外で開催されるグランプリ等のプレミア・イベントの生中継なんかにかじりついている人にはメジャーなものですが、「初日突破率」という指標があります。
つまり、「選択者の内、一定以上の勝ち星を挙げたプレイヤーがどれ程の割合存在するか?」という数値であり、デッキの強さを測るためには非常に分かりやすいものと言えるでしょう。

お次は、これに準ずる指標を見てみましょう。




2.お次に《英雄の記録者/Chronicler of Heroes》




ここで示したのは、全使用者に対するトップ16、64それぞれへの進出率です。右端の「64→16」についてはお分かりかと思いますが、後で説明します。



 まずはTOP16。

 絶対数が少ない発掘、土地単はやや極端な数値ですが、目を引くのは白単Death & Taxesの突破率。
まだまだマイナーだった頃に《Karakas》をプレイして「なにそれ?」と言われたのが最早懐かしいほど、強力なアーキタイプになったと言えます。

 知らない人は殆どいないかと思いますが、Death & Taxes、通称”デスタク”とは、《不毛の大地/Wasteland》《リシャーダの港/Rishadan Port》で相手のマナを拘束し、自分は《霊気の薬瓶/AEther Vial》で生物、特に《スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben》や《ファイレクシアの破棄者/Phyrexian Revoker》と言った「ヘイトベア」を繰り出して攻める白単ウィニーデッキのことを指します。

 白単であるが故に相手の《不毛の大地/Wasteland》の影響が少なく、ソーサリータイミングでの行動を主体とする《実物提示教育/Show and Tell》デッキに強いという、アンチ・トップメタの産物です。
奇跡相手には分が悪いものの、最大手の複数に対して構造的に有利、というのがここまでDTの勝率を押し上げた要因と言えるでしょう。





もう少し広げて今度はTOP64。

 繰り返しとなるDT、そしてLandsのほか、Elves!、UW/r Miracles、Grixis Delverといったデッキがここで登場します。

 使用者の多さ反して、BUG Delver、Jund、UW/b Bladeは低い水準に留まっています。

 いずれも強力なアーキタイプなのですが、今一つ勝てなかった、と言う印象が強い結果になりました。
DT、Lands、Elves!のようなデッキと比べて意識されやすく、明確なメタカードこそないものの、「分かりやすい仮想敵」として据えられ苦戦した結果とも言えるかもしれません。
実際、「何か一つ諦めろ」と言われればLandsやElves!は切り所ですし、Grixis DelverやDTに至っては「しっかりメタれていなかった」という人も多いことでしょう。



3.それから《獰猛さの勝利/Triumph of Ferocity》

 さて、2項では敢えてお話しなかった「64→16」指標についても説明しておきます。

 これはお分かりの方も多いと思いますが、「64位以内にランクインした人数の内、16位に進んだ人数」を意味します。



 誤解を恐れずに言えば、マジックには「運」が付きまといます。頂点に上り詰める為には、人一倍の練習と、そして一握りのそれが必要になるのです。



 少し個人的な昔話をします。

 あるGPのサイドイベントのレガシー(多分100人程度だったと思います)で、その日私は絶好調の5-0を記録していました。

 当時愛用していたのはDark HorizonというBG/wカラーのテンポデッキで、一時はエターナル・レーティング日本2位(1位は何故か京都在住になっていたSCGの実況でお馴染みBen Schwaltz)に登り詰める等、それはもう調子の良かった大昔のことです。

 そんな状態で迎えた6戦目はCanadian Threshold。Delverすら居なかった頃です。

 まずは一本目を対処不能なサイズの《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》で先取、2本目は不用意なアタックでブロッカーを《氷/Ice》されて敗北。気を引き締めて迎えた3本目。
相手の《Volcanic Island》を早々に《根絶/Extirpate》し、盤面には《タルモゴイフ/Tarmogoyf》のにらみ合い。
上空の《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》は《Karakas》でごまかして、除去か追加のクロックの到来を期待する…ライフはまだまだある。少なくとも負けはないだろう…そんな盤面でした。

 そこで事件は起きました。

《氷/Ice》で寝かされてタルモが通る。4点。
《氷/Ice》の追加ドローが《水没/Submerge》。また通る。4点。
次に引かれたのは《氷/Ice》。やっぱり通る。まずい、4点。

そしてその追加ドローは…《Karakas》に突き刺さる《不毛の大地/Wasteland》。
解放された《三人衆》があと3点、3点。


そのCanadian使いはそのまま優勝してしまいましたとさ。



 そのCanadian使いはそれはもう普段から圧倒的な強さを誇るプレイヤーであり、これが単なる運ではないと分かってはいるのですが…
やはり、優勝というものは「何か」が味方して初めてなしえるものなのだと思った瞬間でした。






そういう意味で、敢えてここまでの分析においては、「優勝」「TOP8」に言及せず、1敗(&1分け)ラインであるTOP16にまで視野を広げました。


閑話休題、64/16指数についてです。


これは「それなりに勝ち」から「勝者の一員」と呼べる一歩を登り切った人の割合を意味します。言い換えるなら、「勝ちきれる度合い」とでもしましょうか。


これが極めて高いのがDredge、DT、そしてCanadianの3つです。

 無敗、若しくは1敗ラインで臨んだバブルマッチ。そこで勝ちきる力とはなんなのか?


他方、極めて低い数値となったのがSnT、Miracles、Grixis Delverの3者。

 勝ちきれない、土壇場で涙を呑む。それは何故なのか。



 極めて乱暴な言い方ですが、後者2つは「乱暴に勝ち星を重ねる」ことが得意なデッキです。

《実物提示教育/Show and Tell》を叩きつける、通る、勝つ。
ドロー、《天使への願い/Entreat the Angels》がすべてを台無しにする。相手は手を差し伸べる。
《若き紅蓮術士/Young Pyromancer》、《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》、《陰謀団式療法/Cabal Therapy》、まだ続ける?

 誤解のないように言いますが、「必殺技」を持っていることは間違いなく「強い」と言えるポイントです。
しかしながら、その魅力は抗いがたく甘美で、多くのプレイヤーは本当に最後の一歩を上り詰める執念に欠いていた、というのが「数字」が語る結果です。



一方で前者3つはどうでしょうか。

 あるものは常に揺れ動く盤面で細い細い道筋を手繰り寄せ、あるものは親の仇の如く対策され、それでもなお最後の一歩を駆け上がる。

 奇しくもCanadian、Dredge、白単ウィニー…どれも長い歴史を持つデッキばかりです。不安定な戦況を切り抜けて勝ち星を重ねてきた経験が、最後の1勝を掴みとらせる。

  その「執念」を、そして「歴史」を、「強さ」と呼ばずして何と呼びましょうか。



4.そして、《迷路の終わり/Maze’s End》

「おい!強いデッキ分析とか言ってて最後は精神論かよ!○ね!」

とか聞こえそうです。



 しかし、執念と言うのは勝つ為に非常に重要な要素であり、それは「固執」とは似て非なるものだということを心のどこかに留め置いて欲しいのです。


私の知る限り
「このデッキに殉じる!」
「優勝デッキを取り敢えず使おう」
というタイプの人のほとんどが、どちらも「なんか勝ちきれない!」現象に悩まされたことがあるのではないかと思います。

 私自身、この2者の間をいつもいつも揺れ動いて、うだつのあがらないマジック・ライフに時間を吸われている身なので偉そうなことは言えないのですが。


一つのデッキに固執することは、単に勝利の可能性を放棄する行為であり、逆に真面目にデッキの1枚1枚の意味を考えない人は土壇場での粘り腰に欠ける。

 勿論、愛を注ぐことに何の問題もありません。それが勝利を目指すために合理的な選択である限り、愛は素晴らしい原動力です。

 コピーデッキだって寧ろ積極的に推奨します。最強と呼ばれるデッキ達を実際に手に取ることに勝る練習はありません。これは断言します。
要はどっちのスタンスであったって、頂点を掴む覚悟と、それに見合ったデッキ選択、そして弛まぬ訓練の日々は必ずついてまわるものでしょう。




そしてもう一つ、「歴史」の重みも忘れてはいけません。

 それは長い間、色とりどりのメタゲームの変遷の中で、たくさんの人の手によって練り込まれてきた完成度の高さを意味します。

 幸い、ここには既に先人たちが作り上げた素晴らしいデッキ・リストの山が築かれています。
あれこれアイデアを絞らなくとも、沢山の人の手によって練り込まれた血と汗と涙の結晶が、指先一つで手に入る時代です。私達はネット環境なんて殆ど浸透していなかった黎明期の先人たちに比べて、ただただ恵まれているといえましょう。

BigMagicOpen Legacy Top64デッキリスト

 この中から、あなたの相棒を、勝利の瞬間にその手に携える伴侶を、是非探し出して次はあなたこそが栄光の場に臨むことを夢に描いていてほしいと願います。



 溢れかえる情報の海からインスピレーションを感じ取ったなら、栄冠を掴む自身の姿を想像したのなら、今日から早速特訓の日々に身を投げ出そうではありませんか。




お求めはBigwebで、練習は最寄りのBigmagicで(小声)

 
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