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Deck Remember Vol.5 「フィンキュラ」 
 
text by Iwa-Show




「やっぱ久々にガッツリやると面白いわ」
『だろ? やっぱ何年やっても勝った時は嬉しいわ』
「いやー本腰いれて復帰しようかな」
『まだまだ若い奴らには好きにさせねえってな』



 えー今回も当コーナー、ゲストが来てくれているようですが…ちょっといつもとノリが違いますね。


「結局俺が使ってた赤黒コンも流行らなかったな」
『悪くはなかったんだろ?』
「まあね。でもあのレシピが俺らのやってたコラムに来てたらたぶん「黒単信心」に組み替えてるだろうな」
『HAHAHA』

 今回、次元を超えてやってきてくれたのは2人の超絶魔道士なようです


※あくまで当コラムに登場しているのはマジックのクリーチャーであり、話し方・性格などはイラストから推察して設定されたものであり、実在の人物との関係はありません。


















Vol.5  フィンキュラ

 超級超絶伝説的でありながら2体並べることのできるクリーチャー、《翻弄する魔道士》《影魔道士の浸透者》。彼らはそれぞれ、某伝説のプレインズウォーカーがインビテーショナルでカードデザインを行う権利を勝ち取った際にデザインしたものだ。

「俺はそもそもデザインしたカードが地味すぎたから元より強くなったんだぜ」
『僕は最初デザインしたフリースペルの《神の怒り》が没になったのが今でも残念だよ』
「あんなもん通ると思ってたのか?」
『僕はいつだって真剣さ』


 この人らほっといたらガンガンしゃべるな…




1.詳細

  《翻弄する魔道士》《影魔道士の浸透者》の2体は、それぞれ登場したエキスパンションは別だが、スタンダードでは同居可能な期間があった。彼ら優秀な青のクリーチャーが4枚ずつ採用されており、彼らのバックアップに《対抗呪文》《吸収》といったカウンター、《神の怒り》《名誉回復》といった除去や、《嘘か真か》のようなドローを搭載し、「インベイジョン」「オデッセイ」「第7版」の優秀な多色土地を詰め込んだ結果、「基本土地がゼロ」という、当時としては珍しく、また採用されているカードが軒並み高額レアのため非常に高価なデッキが作られた。これが「フィンキュラ」である。デッキ名は、彼らのデザイナーの名前を合わせたものだ。




『このデッキ名は、僕が頭にある=頭脳的であるということを示しているね』
「ばかいえ、後ろにどっしり控えてるのがカッコイイんだよ」

  このデッキはマジックファンの間で、いろいろと話題になった。しかし、最終的な結論としては「このデッキ高いけどあんまりだね」というものだった。 

 何故なら、当時のスタンダードには単騎でこのデッキを押せる《野生の雑種犬》というバケモノがいたからだ。


「ちくしょうあの犬ッコロめ、今でも夢に見るぜ」
『僕が止められちゃうからね。緑のクリーチャー対策で雇っていた《幽体オオヤマネコ》でも太刀打ちできなかったんだよね…』

 パッとした活躍が出来ずにスタンダードを去った「フィンキュラ」。しかし、時が流れて2003年。フォーマットはエクステンデッドで開催された、GPアナハイムにて遂に「名誉回復」の時は訪れたのだ。

「いやー、Benの野郎には感謝しねぇとな」
『ちゃんと4枚ずつ採用とは、さぞかし僕らのファンに違いないね』

 ファンかどうかはともかく、アナハイムでBen Rubinが使用したエクステンデッド版のフィンキュラが堂々の優勝。では、早速そのレシピを確認してみよう。





2.サンプル

Grand Prix Anaheim2003 Champion - Ben Rubin
23land
2 《地底の大河/Underground River》
2 《広漠なるスカイクラウド/Skycloud Expanse》
4 《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》
4 《汚染された三角州/Polluted Delta》
3 《島/Island》
2 《平地/Plains》
2 《沼/Swamp》
4 《コイロスの洞窟/Caves of Koilos》

11creature
4 《翻弄する魔道士/Meddling Mage》
4 《影魔道士の浸透者/Shadowmage Infiltrator》
3 《賛美されし天使/Exalted Angel》

26spell
4 《強迫/Duress》
3 《浄化の印章/Seal of Cleansing》
4 《渦まく知識/Brainstorm》
1 《燻し/Smother》
3 《悪魔の布告/Diabolic Edict》
1 《解呪/Disenchant》
3 《綿密な分析/Deep Analysis》
4 《名誉回復/Vindicate》
2 《のぞき見/Peek》
1 《サーボの網/Tsabo's Web》
15sideboard
1 《魔力流出/Energy Flux》
1 《激動/Upheaval》
1 《ロボトミー/Lobotomy》
1 《減衰のマトリックス/Damping Matrix》
4 《寒け/Chill》
3 《金属モックス/Chrome Mox》
3 《吸血の教示者/Vampiric Tutor》
1 《抵抗の宝球/Sphere of Resistance》
 このデッキにはカウンターは採用されていないが、動きとしてはクロックパーミッション風のものとなるだろう。現代風で言うならば、「エスパーミッドレンジ」といったところだろう。

「馬鹿野郎、なんでも今風に言えばいいってもんじゃーねーよ」
『これは最近のプレイヤーに言いたいんだけど、確かにデッキ名からデッキの構成は伝わりやすくなった。でも、そうじゃないんだよね、僕らにとってのデッキ名っていうのは。』
「そーなんだよなぁ」

 長くなりそうな語りは置いといて、このデッキの解説に戻ろう。打撃力はフィンキュラ達だけでは少々物足りないので、当時の中速デッキのお供《賛美されし天使》を雇っている。《のぞき見》と《翻弄する魔道士》のコンボが搭載されているのもポイントだ。1枚挿しのカードがチラホラ見えるのも特徴的だが、《渦巻く知識》とフェッチランド、そして《影魔道士の浸透者》の力をもってすればこれらのカードに辿り着くことも容易いものだ。



  また、サイドボードも特徴的で、各種デッキに刺さる1枚を《吸血の教示者》からサーチすることで水増しする方式を採用するのと同時に、苦手な「RDW」「ゴブリン」といった速い赤系を封殺するための《寒け》を4枚フル投入し、しかもこれを早いターンに貼らなければ意味がない!とでも言うかのように《金属モックス》を3枚も採用。これで1ターン目に《寒け》、2ターン目にクロックと展開して即投了させることが出来る。この奇抜なサイドボードが正解だったか否かは、「優勝」の二文字が証明しているところである。



3.リブート

  さて、当コラムの肝であるリブートだが…今回は当人達に任せてみましょうか。くれぐれも「青白コントロールを赤単バーンに造り替える」ようなエクストリーム・リブートはしないように。

「わかってるって、俺たちも悪気があってやったわけじゃないんだ」
『あの頃皆に求められていたものに応えただけさ。何はともあれ、僕らの新しいデッキを見てみよう』

フォーマット:モダン

Sample Deck
24land
2《魂の洞窟/Cavern of Souls》
2《沈んだ廃墟/Sunken Ruins》
2《秘教の門/Mystic Gate》
2《忍び寄るタール坑/Creeping Tar Pit》
2《天界の列柱/Celestial Colonnade》
3《霧深い雨林/Misty Rainforest》
3《湿地の干潟/Marsh Flats》
1《神無き祭殿/Godless Shrine》
1《湿った墓/Watery Grave》
1《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
3《島/Island》
1《沼/Swamp》
1《平地/Plains》

16creature
4《翻弄する魔道士/Meddling Mage》
4《影魔道士の浸透者/Shadowmage Infiltrator》
4《闇の腹心/Dark Confidant》
2《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》
2《非凡な虚空魔道士/Voidmage Prodigy》

20spell
4《コジレックの審問/Inquisition of Kozilek》
1《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》
4《流刑への道/Path to Exile》
1《喉首狙い/Go for the Throat》
4《差し戻し/Remand》
2《謎めいた命令/Cryptic Command》
4《血清の幻視/Serum Visions》
15sideboard
3《思考囲い/Thoughtseize》
2《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》
3《不忠の糸/Threads of Disloyalty》
3《石のような静寂/Stony Silence》
2《否認/Negate》
2《至高の評決/Supreme Verdict》
「こりゃまた揃えたもんだなー」
『僕らだけじゃクリーチャーが足りないからね。ボブに声をかけたついでに、ティアゴとカイにも協力してもらうことにしたんだ』


「オールスター打線って感じで、俺はこういうの嫌いじゃないぜ。全員ウィザードだから《魂の洞窟》が良い仕事するんじゃねえかな」
『まあ僕らが4枚投入されるのは当然として、その脇を固めるカードは皆の使いやすい様にカスタマイズしてもらって構わないと思うよ。《ギタクシア派の調査》や手札破壊を増やして、手札完封系のデッキを目指すのも面白いアプローチかな』
「トップされたカードもちゃんと俺で指定しておけば何の問題もないってことよ」
『ガチガチのモダンは僕もプレイヤーの一人として最高に面白いと思うけど、たまにはこういう「真面目なファンデッキ」っていうのも良いものだと思うよ。とりあえず、《血染めの月》を置かれたら無駄な時間は使わずに投了しようね』
「とりあえず俺で指定しておけば問題ないって!」




4.終わりに
 「こだわり」というのは大事なもので、時にはそれが定石を覆すことだってある。例え不遇な時代があったとしても、負けじと、その「こだわり」を次のレベルへと昇華させる努力をしてほしいと思う。この「フィンキュラ」が頂点に輝いたように、必ずやその思いは報われるはずだ。

「運が良かっただけじゃねーの?」
『プレイヤー補正が大半だと思うね』

 あーもうブチ壊しですやん…

「そうそう、お前が以前に紹介してたデッキ、あんなもんお前…」
『紙の束だ!』


 
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