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岡本桂多のKill them All! 第1回 統率者戦の基本その1 
 
text by Keita Okamoto


はじめに

 初めまして、BIG MAGIC池袋店統率者戦担当の岡本です!
今回、BIGWEB マジック:ザ・ギャザリング情報サイト開設に伴い、統率者戦(EDHと言った方がなじみのある方もいるかもしれません)に関する記事を書くという大役を拝命しました。池袋店のスタッフの中では一番このフォーマットについて熟知しているつもりですが、僕自身このフォーマットについて全てを熟知しているわけではないので、ご意見やご質問、また至らない点があれば遠慮なく教えてください。

 このコラムでは統率者戦に関する事を書いていくつもりですが、今回は初回ということで、統率者戦をやってみたいけどどんなものなのかよくわからない、もしくは統率者戦を実際に始めてみたけど右も左もわからない、という方々のためにこのフォーマットにおける基本的な事柄の紹介をしたいと思います。すでに統率者戦になじみのある方はちょっと退屈かもしれませんがよろしくお願いします。


統率者戦の基本

 まず、統率者戦とはマジックにおける多人数戦ルールを用いたカジュアルフォーマットです。多人数とは言っても4人±1人ぐらいでやるのがちょうどいいでしょう。
統率者戦フォーマットでは、普通のマジックの構築とは違ったデッキ構築ルールがあります。

・デッキは統率者として指定した伝説のクリーチャー1枚を必ず含む100枚ちょうど
・基本土地以外のカードは各種1枚ずつしかデッキに入れられない
・デッキに入れられるカードは、統率者の固有色(そのクリーチャーの色+そのクリーチャーのテキスト欄に書いてある色マナシンボル)以外の色を持つカードは入れられない

 この3つの大前提のルールが統率者戦の面白さを形作っています。
まず1つ目と2つ目のルールによって、必要なカードを必要なタイミングで手札に引き込む事が困難になっていて、各ゲームでの「引き」に依存して毎回異なったゲームの展開が楽しめます。
3つ目のルールによって、各デッキに出来る事と出来ない事が分かれて、それぞれのデッキを差別化する事が出来ます。


 ここまではデッキ構築段階で気を付けるべき事を紹介してきたので、ここからは実際にゲームを始める時の流れを解説していきます。

 統率者デッキは統率者込みで100枚のデッキを構築しますが、ゲーム開始時には統率者はデッキから除き、コマンド領域という領域におかれます。
 統率者がこのコマンド領域にいる時、手札にあるかのようにプレイすることが出来ます。 

また、統率者が墓地か追放領域に置かれる場合、代わりにコマンド領域に置くことを選択できるので、また唱え直すことができます。しかし、2回目以降にコマンド領域から唱える時、1回につき無色2マナ多く支払わなければいけません。したがって、統率者を出しては除去されてという流れを繰り返すと唱えなおすためのマナコストが2回目は2マナ、3回目は4マナ、4回目は6マナとどんどん重くなっていきます。

 統率者はどのゲームでも(土地事故さえ起きなければ)毎回唱える事が出来るため、基本的にはデッキの核となります。統率者の効果をうまくサポートするカードを採用したり、統率者とコンボするカードを採用したり、逆に統率者をおとりにして残りの99枚のデッキに入っているまったく別のコンボを成立させたりと色々な戦術が取られます。



 統率者戦は多人数で行われるので、多人数ルールとして初期ライフは40で、先行プレイヤーも最初のターンのドローフェイズにドロー出来ます。

 各プレイヤーの初期ライフが40もあるので、普通の構築戦では非常に強力な《タルモゴイフ/Tarmogoyf》などの「少しマナレシオが良いだけのクリーチャー」はあまり採用されません。ただし、少々マナコストがかさんでも強力なパワーを持っていたり、アドバンテージを一気にとれたりするカードはよく採用されます。これは、多人数戦だと必然的に長期戦になる事が多く、長期戦になればなるほど単体でのカードパワーが重要になってくるためです。



 普通に攻撃してライフを攻めるだけだと、自分だけが攻撃するわけではないとはいえ、合計で120点のライフを削らなければ勝利できません。したがって、普通に攻撃するだけではなく無限コンボを採用したり、そもそも無限コンボしか狙わないようにデッキを構築したり、毒カウンターなら合計30個で良いので感染デッキを組んだりと様々な工夫が凝らされます。

 また、カードパワーの高いカードはマナコストがかさんでしまいがちなので、一般的にマナ加速が多く採用されます。マナ加速に長ける緑以外の色では、マナを生み出すアーティファクト「マナアーティファクト」を主に用います。



 後は基本的には普通のマジックのゲームと同じようにプレイするだけですが、いわゆる「ヘイト値」と呼ばれる「卓の中でいかに目立った脅威となっているかどうか」という目に見えない値があると信じられています。ここでも重要な点はいくつかあるのですが、それは一概に解説できるものではなく、実戦を重ねて慣れていくしかありません。



各色の特徴

ここからは統率者戦における各色の特色やよく採用されるカードの例を挙げていきたいと思います。



リセット呪文
《神の怒り/Wrath of God》《ハルマゲドン/Armageddon》《質素な命令/Austere Command(LRW)》《カタストロフィ/Catastrophe》《大修道士、エリシュ・ノーン/Elesh Norn, Grand Cenobite》など。

 統率者戦では効果が全体に及ぶものは普通のマジックのゲームとは異なり、対戦相手3人すべてに効果が及ぶので普段よりも強力なものになります。リセット呪文に関しては特にその傾向が顕著になります。対戦相手1人だけが強力なクリーチャーを展開していく場合は単体除去でなんとでもなりますが、対戦相手3人ともが強力なクリーチャーを展開してきた場合、こちらも強力なクリーチャーを展開していく事も手ではありますが、1枚の《神の怒り/Wrath of God》で対戦相手全員のクリーチャーを一掃してしまった方が良いでしょう。

 土地破壊に関しては、自分が先に脅威となるクリーチャーを展開し、対戦相手がそれに対する対抗策を展開する前にその土地を縛る使い方が非常に強力です。マジックの過去のデッキ「セラマゲドン」と同様の単純な戦法ではありますが、非常に強力です。




アーティファクト・エンチャント破壊
《解呪/Disenchant》《浄化の印章/Seal of Cleansing》《塵への帰結/Return to Dust》《塵は塵に/Dust to Dust》など。

 統率者戦デッキは特別に尖った構成にしない限り、アーティファクトやエンチャントが採用されないデッキはありません。それらがただ単にマナ加速をしていくものやカードを引き増しするものであれば(限度はありますが)そこまで躍起になって破壊する必要はありませんが、無限コンボのパーツとして採用されるアーティファクトやエンチャントも無数に存在します。

 他の人が妨害してくれればそれで良いのですが、基本的に無限コンボは成立してしまえば他のプレイヤー全員が敗北してしまうので、一人勝ちを阻止するためにも《解呪/Disenchant》などのインスタントタイミングで使える妨害カードを採用する事を怠らないようにしましょう。

 また、緑以外のデッキはマナ加速をアーティファクトに頼るしかありません。したがって、卓に緑が絡んだデッキばかりでない限りアーティファクトの総数が必然的に多くなります。自分のマナ加速を進める事ももちろん重要ですが、対戦相手のマナ加速を妨害する事もまた重要になってきます。こういう時は一人のマナ加速を妨害するだけでは効果が薄いので、1対1交換しか出来ない《解呪/Disenchant》などよりは《塵への帰結/Return to Dust》などのように1対多数交換が出来るカードを積極的に使っていきましょう。




ロック手段
《沈黙のオーラ/Aura of Silence》《石のような静寂/Stony Silence》《戦争の報い、禍汰奇/Kataki, War’s Wage》《スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben》《エーテル宣誓会の法学者/Ethersworn Canonist》など。



 アーティファクト・エンチャント破壊と通じるものがありますが、《沈黙のオーラ/Aura of Silence》で「対戦相手だけ」マナアーティファクトを展開しづらく出来、《石のような静寂/Stony Silence》でそもそもマナアーティファクトやその他の起動型能力頼みのアーティファクトを封殺でき、《戦争の報い、禍汰奇/Kataki, War's Wage》でアーティファクトを維持しづらく出来ると、自分への被害を最小限に抑える事が出来れば盤面を掌握しやすくなります。

 《スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben》や《エーテル宣誓会の法学者/Ethersworn Canonist》などの呪文を唱える回数に制限をかけるカードは自分だけでなく対戦相手3人全員に及ぶので、これもまたロック手段として有効なものとなります。


 白はクリーチャーの質の良いものが多くあります。
《セラの高位僧/Serra Ascendant》は初期ライフが40の統率者戦では1マナ6/6というちょっとおかしい強さのクリーチャーになります。さすがにそんなクリーチャーが1ターン目に出てきたら、1枚で全員を攻撃して勝つ事は出来ないものの1人を退場させる事は容易ですし、仮に除去できたとしても絆魂のおかげで大量のライフが供給されているのでその後のゲームの展開を楽にしてくれます。終盤の消耗戦の時に引いてきた時の弱さを補って余りあるほどのパワーを見せつけてくれます。

 《目覚ましヒバリ/Reveillark》は多くのカードとシナジーを形成します。《霊体の先達/Karmic Guide》、《サッフィー・エリクスドッター/Saffi Eriksdotter》、《影武者/Body Double》、《鏡割りのキキジキ/Kiki-Jiki, Mirror Breaker》のどれか1枚と生け贄手段で無限生け贄コンボになります。

 無限コンボを狙わなくとも、戦場に出たときに何か効果を及ぼす、パワー2以下のクリーチャーカードは無数に存在します。スタンダード当時でも「青白ヒバリ」や「赤白ヒバリ」などのデッキが存在していましたが、その当時共演出来なかった意外なカードとのシナジーは多く存在します。



 白は一見何でも対処できるように見えますが、欠点の一つにカードを引く効果を持つカードが極端に少なく、工夫しなければいずれ手札が切れて息切れしてしまう事があげられます。1対多数交換はともかく、1対1交換を繰り返していくだけだと盤面は安定しますが自分だけリソースが無くなっていってしまうので気をつけましょう。ドローサポートが出来る色との混色だと話は簡単なのですが、単色で組む時はアーティファクト(《精神の眼/Mind’s Eye》《遠見の仮面/Farsight Mask》《頭蓋骨絞め/Skullclamp》など)を使って補っていきましょう。





カウンター
《対抗呪文/Counterspell》《Arcane Denial》《巻き直し/Rewind》《Force of Will》《Mana Drain》《マナ漏出/Mana Leak》《エレンドラ谷の大魔導師/Glen Elendra Archmage》《否認/Negate》《邪魔/Hinder》など。

 青の特徴の一つとして有名なのが豊富なカウンター呪文でしょう。マジックでは土地以外のカードは基本的に全て打ち消す事が可能なので、そのカウンター呪文を使える青は全てのカードに干渉できると言っても過言ではないでしょう。よく使われる無限コンボの中にはクリーチャー除去が効かないものや、アーティファクト・エンチャント破壊が効かないものなど、色々な妨害耐性を持ったコンボがあります。しかし、打消し耐性のある無限コンボはほぼ存在しません。何を打ち消せば良いのかの判断さえ的確に出来れば、どんなコンボであっても妨害する事が出来ます。また、《邪魔/Hinder》や《呪文丸め/Spell Crumple》は対戦相手の統率者を打ち消す事で墓地(に行く代わりに普通はコマンド領域に戻すと思いますが)ではなく最も復帰しづらいライブラリーの一番下へ送ってしまう事ができ、そのプレイヤーの統率者を(少なくともしばらくの間)再起不能にできます。




ドロー
《定業/Preordain》《思案/Ponder》《渦まく知識/Brainstorm》《強迫的な研究/Compulsive Research》《入念な考慮/Careful Consideration》《嘘か真か/Fact or Fiction》《青の太陽の頂点/Blue Sun’s Zenith》《聖別されたスフィンクス/Consecrated Sphinx》など。

 統率者戦では対戦相手が3人もいるため、対戦相手全員の行動に一々干渉したり、逆にこちらが展開したカードを対処されたりを繰り返していくとすぐに手札が尽きてしまいます。ドロー呪文が豊富な青なら息切れすることなく継続的に展開していけるでしょう。

 また、序盤にマナ加速を引きたい時、中盤から終盤にコンボパーツを集めたい時、相手のコンボを妨害できる妨害カードを探しに行く時など、ドロー呪文がいらないタイミングはほとんどないと言っていいでしょう。しかしその一方、何も考えずにドロー呪文を唱えるのではなく、何を引きたいのかをちゃんと考えてから唱えるようにしないといざという時に必要なものを引いてこられなくなるので注意しましょう。




バウンス
《残響する真実/Echoing Truth》《送還/Unsummon》《ブーメラン/Boomerang》《蒸気の連鎖/Chain of Vapor》《造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Savant》など。

 青いカードでパーマネントカードを破壊するカードはほとんどありません。しかしその代わりに青は手札に戻す効果を持つカードが豊富にあります。これらのバウンスカードは確かに一時的にしかカードをどかす事は出来ないですが、コンボ始動を邪魔するカードや1ターンでも長く放置しておくと莫大なアドバンテージにつながってしまうカード、こちらのコンボ始動を警戒して全力でこちらのライフを削りに来るアタッカーなどを手札に戻す時の動きは一時的とは言えないほどゲームに非常に大きな影響を及ぼします。
 もちろん何も考えずにただ闇雲にバウンスしていてもこちらのリソースが減っていくだけなので、ここでもまたどのタイミングでバウンスすれば良いのかをしっかりと見極める必要があります。




コントロール奪取
《金粉のドレイク/Gilded Drake》《支配魔法/Control Magic》《不実/Treachery》など。

 一般的に統率者は破壊や除外をしてもコマンド領域に戻るだけで、また再び戦場に戻ってくることができます。しかしコントロールを奪われた時はコマンド領域に戻れないので、統率者を除去する方法としては最良の方法と言えるでしょう。また、統率者のコントロールを奪わなくとも統率者戦のデッキで採用されるクリーチャーは歴代のクリーチャーの中から厳選されたものになるので必然的にカードパワーが高く、コントロールを奪取することで形勢を一気にひっくり返すことができるでしょう。





豊富なコンボパーツ

 青単色でもいくつか無限コンボがあり、また青はそのコンボパーツを探すand/or引く能力に長けています。
 《精神力/Mind Over Matter》+《寺院の鐘/Temple Bell》(+《無限に廻るもの、ウラモグ/Ulamog, the Infinite Gyre》や《真実の解体者、コジレック/Kozilek, Butcher of Truth》、《荒廃鋼の巨像/Blightsteel Colossus》)で、対戦相手全員がライブラリーアウトして自分は各種自動的にライブラリーを修復するカードによって自分だけ生き延びるコンボです。無限コンボはクリーチャーを介するものが多いなか、このコンボはクリーチャー除去が全く効かないコンボで、色によっては全く干渉できないものになっていて非常に強力です。

《パリンクロン/Palinchron》+《幻影の像/Phantasmal Image》、《パリンクロン/Palinchron》or《巨大鯨/Great Whale》or《流浪のドレイク/Peregrine Drake》+《狙い澄ましの航海士/Deadeye Navigator》、《High Tide》+《パリンクロン/Palinchron》で土地(島)の枚数が十分にあれば無限マナになります。




 青はどんなカードに対してもカウンター呪文によって対処する事が出来、また仮に打消せなかったとしてもバウンスすることにより一時的とはいえ対処する事が出来る万能色です。
 欠点はほとんどありません。強いてあげるとするならば、爆発力重視の単色で組む際にはアーティファクトを多用する必要があるので、《無のロッド/Null Rod》や《石のような静寂/Stony Silence》などを設置されると一気に行動が制限される事です。これらのカードはコストが非常に軽いので打消しづらく、バウンスしてもまたすぐに設置されてしまうので対処に困る事になるでしょう。アーティファクト・エンチャント破壊が入れられる色との混色デッキであれば特に問題は無いのですが、青単色の場合は《無効/Annul》や《鋼の妨害/Steel Sabotage》、《否認/Negate》などの打消し呪文、または非常に限定的ではありますが《呪文嵌め/Spell Snare》を採用しても良いかもしれません。

 また、緑絡みで混色する時はマナアーティファクトではなく土地サーチやマナクリーチャーを用いてマナ加速するようにするとこの欠点を補えるでしょう。
 他の欠点としては、クリーチャー同士の戦いにもし持ち込まれてしまうと、クリーチャー自体のスペックは高くはないので打ち負けてしまう事があげられます。単色の場合はより早くコンボを目指せるようにしてクリーチャー戦を出来るだけ避けるようにして、多色の場合は他の色のクリーチャーに頼るようにしましょう。


後半に続きます。
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