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石田龍一郎の最新スタンダード解説 第1回 迷路が生み出した新環境
 
text by Ryuichiro Ishida

 初めまして。この度スタンダード記事を書かせて頂くことになった石田龍一郎です。
 ドラゴンの迷路が発売されて既に一月が経とうとしていますが'(※1)、メタゲームの移り変わりが激しいですね。規模の大きな大会で上位陣のデッキは週替わりで、先週の勝ち組は今週の負け組というのもよくある話。その中で自分が興味を持った面白いデッキ、今後見かけそうなデッキを紹介したいと思います。

※1 記事執筆時が5月

 まず初めにご紹介したいのがジャンドコントロール

トーナメント:Starcitygames Open Series: Charlotte 2013/05/11
順位:2位
Player:Tyler Phelps
Deck Name:Jund Midrange
Deck Designer:
アーキタイプ:ジャンドミッドレンジ
25 land
4《血の墓所/Blood Crypt》
2《魂の洞窟/Cavern of Souls》
2《竜髑髏の山頂/Dragonskull Summit》
2《ケッシグの狼の地/Kessig Wolf Run》
4《草むした墓/Overgrown Tomb》
3《根縛りの岩山/Rootbound Crag》
4《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
4《森林の墓地/Woodland Cemetery》

13creature
4《高原の狩りの達人/Huntmaster of the Fells》
2《狂気の種父/Sire of Insanity》
4《スラーグ牙/Thragtusk》
3《オリヴィア・ヴォルダーレン/Olivia Voldaren》

22spell
1《突然の衰微/Abrupt Decay》
2《化膿/Putrefy》
2《悲劇的な過ち/Tragic Slip》
3《忌むべき者のかがり火/Bonfire of the Damned》
1《戦慄掘り/Dreadbore》
4《遥か見/Farseek》
2《ミジウムの迫撃砲/Mizzium Mortars》
1《ラクドスの復活/Rakdos's Return》
1《ラクドスの魔鍵/Rakdos Keyrune》
2《地の封印/Ground Seal》
2《原初の狩人、ガラク/Garruk, Primal Hunter》
1《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》
15 Sideboard
2《吸血鬼の夜鷲/Vampire Nighthawk》
2《悲劇的な過ち/Tragic Slip》
2《強迫/Duress》
2《火柱/Pillar of Flame》
1《ラクドスの復活/Rakdos's Return》
2《殺戮遊戯/Slaughter Games》
1《地の封印/Ground Seal》
2《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》
1《見えざる者、ヴラスカ/Vraska the Unseen》
 以前から存在していたアーキタイプですが、ドラゴンの迷路から《狂気の種父/Sire of Insanity》を得たことで強化されたのが大きいですね。




《狂気の種父/Sire of Insanity》のターン終了時のオールディスカード能力は《スフィンクスの啓示/Sphinx's Revelation》を始めとするコントロールに対する明確な回答になるのが一番の強み。《ラクドスの復活/Rakdos’s Return》ではトップされた場合と捨てさせきれなかった時の《スフィンクスの啓示/Sphinx’s Revelation》に対応できなかった点が弱点でしたが《狂気の種父/Sire of Insanity》はその点では完璧に対応してくれます。

 エンド時には手札が無くなってしまうので相手はインスタントタイミングで対応しなければならず、擬似的な除去耐性を持ち合わせているので優秀なフィニッシャーとして活躍してくれます。サイズが6/4と生物としてのスペックも十分高いので、今後ジャンドでは使われ続けるでしょう。

優秀なフィニッシャーを手に入れた以外はデッキ構成では特に大きな変更点はなく、除去コントロールの構成はそのままです。クリーチャーは《スラーグ牙/Thragtusk》《高原の狩りの達人/Huntmaster of the Fells)》《オリヴィア・ヴォルダーレン/Olivia Voldaren》の3種とマナ基盤の《遥か見/Farseek》は固定パーツ。あとは除去やプレインズウォーカーなどが入るのですが、ドラゴンの迷路で再録された《化膿/Putrefy》のような優秀な除去や単体で強力なカードを豊富に持つのもジャンドの強み。他にも新カードを得たので一枚ずつ見ていきたいと思います。


《死橋の詠唱/Deadbridge Chant》

ジャンドの同型戦やコントロール全般など遅めのゲーム展開になるとき有効なカード。恒久的にアドバンテージを得続けることで有利な戦場をつくることができます。《狂気の種父/Sire of Insanity》とは逆のプローチになり、《ニンの杖/Staff of Nin》のような形で勝ちを狙えます。


《花崗岩の凝視/Gaze of Granite》

 マナはかかるけれども、軽量クリーチャーやトークンを一掃できる全体除去カード。有効に効くかどうかは速度やデッキタイプなど相手次第なところがありますが、メタ次第で活躍が十分期待できます。


《残虐の達人/Master of Cruelties》

 先制攻撃+接死で単体での接触戦闘において無敵の性能を誇るクリーチャー。相手のライフを1にする能力でゲームエンドを演出することもできるかなりの高スペッククリーチャーです。
自身の攻撃ではライフを1にはできないところが、相手を殺さずにいたぶることを楽しむ様が容易想像できフレーバー的にも面白い1枚。《残虐の達人/Master of Cruelties》を軸として考え、それからデッキを作りたくなるような良カードの一つです。


《ザル=ターのドルイド/Zhur-Taa Druid》


ジャンドの一番強い動きは、2ターン目《遥か見/Farseek》や《東屋のエルフ/Arbor Elf》などのマナ加速から高マナ域のカードを叩き付けることだと自分は考えています。
新しいマナ加速の《ザル=ターのドルイド/Zhur-Taa Druid》は戦略的には合致しています。後半引いてもダメージソースにもなるので、少し前のめりに押し切るような形のデッキ構成で活躍する場面があるかもしれません。個人的に期待の一枚です。


これらのカードはまだ採用率が低く、入っていてもサイドボードに数枚仕込まれている程度でしか見かけません。けれどメタや構成次第では十分採用されうるカード達ばかりです。《吸血鬼の夜鷲/Vampire Nighthawk》をメインで採用する場合など、同じジャンドでも特色の違いが出やすいのも特徴。デッキ内の一枚一枚のカードパワーが単体で高く大抵のデッキに対して安定して戦える点、固定パーツの少なさから調整がし易い点。この二つから今後も大きな大会では一定数存在するアーキタイプでしょう。



次にご紹介したいのがバントフラッシュ



トーナメント:プロツアー"テーロス"姫路予選
順位:優勝
Player:Shimizu Naoki
Deck Name:ギガフラッシュ
Deck Designer:シミチン
アーキタイプ:バントコントロール
25land
4《繁殖池/Breeding Pool》
4《寺院の庭/Temple Garden》
4《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
4《内陸の湾港/Hinterland Harbor》
3《陽花弁の木立ち/Sunpetal Grove》
4《氷河の城砦/Glacial Fortress》
1《島/Island》
1《森/Forest》

8creature
4《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》
3《ボーラスの占い師/Augur of Bolas》
1《修復の天使/Restoration Angel》

12spell
4《ワームの到来/Advent of the Wurm》
2《原形質捉え/Plasm Capture》
3《スフィンクスの啓示/Sphinx's Revelation》
1《雲散霧消/Dissipate》
3《送還/Unsummon》
3《思考掃き/Thought Scour》
2《熟慮/Think Twice》
1《サイクロンの裂け目/Cyclonic Rift》
2《至高の評決/Supreme Verdict》
4《アゾリウスの魔除け/Azorius Charm》
2《セレズニアの魔除け/Selesnya Charm》
15 Sideboard
2《セレズニアの声、トロスターニ/Trostani, Selesnya's Voice》
1《絹鎖の蜘蛛/Silklash Spider》
4《復活の声/Voice of Resurgence》
2《雲散霧消/Dissipate》
2《クローン/Clone》
2《ギルドとの縁切り/Renounce the Guilds》
1《至高の評決/Supreme Verdict》
1《記憶の熟達者、ジェイス/Jace, Memory Adept》
 このデッキレシピは公式の記事などでも有名な清水さんがPTQで抜けたものです。デッキの核となるのが《ワームの到来/Advent of the Wurm》で、これを手に入れたことでの成立したこのアーキタイプ。インスタント呪文が多く軽めのコントロールデッキになっています。




《スフィンクスの啓示/Sphinx's Revelation》や《思考掃き/Thought Scour(DKA)》で手札補充しつつ《送還/Unsummon》や《アゾリウスの魔除け/Azorius Charm》や各種カウンターなどで戦場のお茶を濁すのが基本的な動き。最後は《ワームの到来/Advent of the Wurm》で素早く締める。フラッシュとある通り相手のターン中に動ける呪文が多く、細かく相手のカードを捌けるので、実際に相手にすると隙が少なく厄介なデッキです。

《ワームの到来/Advent of the Wurm》のカードは本当に強力で、インスタントタイミングで出てくる5/5クリーチャーはどんなデッキ相手でも攻防一体の活躍をしてくれます。《修復の天使/Restoration Angel(AVR)》と比べパワー5なので速やかにゲームエンドまで導いてくれるのが良い点ですね。《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》や《ボーラスの占い師/Augur of Bolas》のおかげでアドバンテージが得やすく運用がし易いのもメリット。

サイドボードにある《復活の声/Voice of Resurgence》もドラゴンの迷路で得た新戦力の一つ。インスタントタイミングの挙動の制限と除去耐性により対コントロール性能は言わずもがな、対ビートでも2マナ2/2+トークンでブロック要因として無駄になることが無い。





ボード上で得られるアドバンテージ量は2マナ域では破格です。2マナのクリーチャーのオマケに3マナの《オドリックの十字軍/Crusader of Odric》相当のトークンがついてくるというのだからおかしな話です。寧ろオマケがメインと言っても差し支えないでしょう。

《復活の声/Voice of Resurgence》はリアニメイトなどの接触戦闘の起きない短期決戦以外では活躍が期待できます。言い方が悪いかもしれませんが、適当に4枚デッキに積んでも雑に強いです。どんなマッチアップでも腐りにくいので、《復活の声/Voice of Resurgence》はサイドボードよりメインボード向けのカードだと自分は感じています。

 この白緑の2種類は今回のドラゴンの迷路で得た強力カードの筆頭で、それらの効果を十分に発揮しきることができるこのデッキのポテンシャルの高さはすさまじいものがあります。
このデッキでは入りませんが、《アルマジロの外套/Armadillo Cloak(INV)》のリメイク版《ひるまぬ勇気/Unflinching Courage》も白緑の即戦力の一つです。自分は今回のセットで白緑が一番強化されたのではないかと思っています。


このバントフラッシュには元となったレシピがSCGの大会結果にあるのですが、このデッキでは2枚《原形質捉え/Plasm Capture》と《サイクロンの裂け目/Cyclonic Rift》が採用されています。元のレシピでは《巻き直し/Rewind》が採用されていているのですが、《原形質捉え/Plasm Capture》の方が噛み合ったときの挙動の大きさがメリットになります。
大容量の《スフィンクスの啓示/Sphinx’s Revelation》や超過した《サイクロンの裂け目/Cyclonic Rift》など大味で勝ちに繋がり易い決め技があるはこの構築の大きな強みです。大きな挙動に繋がらない場合でもドロー呪文が豊富なので余ったマナの使い道に困ることも少ないでしょう。




サイドボードにある《ギルドとの縁切り/Renounce the Guilds》も優秀なカードです。相手の多色パーマネントが少ない場合や自分が多色パーマネントを採用している場合だと使い辛いですが、このカードでしか対処できないカードも多くあります。
 ここ最近で使用率の高いカードならば《聖トラフトの霊/Geist of Saint Traft》《ファルケンラスの貴種/Falkenrath Aristocrat》《ボロスの反攻者/Boros Reckoner》などに2マナで対処できるのが大きなメリットでしょう。他にも多色のパーマネントは多いので、今後も地道に使われ続けるでしょう。





 ただ性能が相手依存なので、相手のデッキがグルールアグロやナヤブリッツ、リアニメイトなどでは活躍が期待できません。また生け贄にするパーマネントは相手が選ぶのでピンポイントで上手く使ってやる必要があります。
《ギルドとの縁切り/Renounce the Guilds》は環境上に存在する強力カードに対処できるが、万能でなく使い易すぎない一枚。カード単体の性能で見たときに、強すぎず弱すぎないバランスの取れた良カードだと思います。

バントフラッシュは先ほど紹介したジャンドに対して《送還/Unsummon》や《セレズニアの魔除け/Selesnya Charm》で《狂気の種父/Sire of Insanity》に対処し易く、安定して戦うことができます。
相手エンド時に《修復の天使/Restoration Angel》で動き《ラル・ザレック/Ral Zarek》という強力プレインズウォーカーを得たトリコミッドレンジも注目のデッキですが、《ワームの到来/Advent of the Wurm》からアプローチしたバントフラッシュも強いので、どちらが良いかと言えば甲乙つけがたいです。今後の動向にも注目ですね。



 如何でしたでしょうか?今回は新カードを得て強化されたデッキ2種を取り上げてみました。
自分の記事が皆様の考察やデッキ構築の足掛かりになれば幸いです。

 それでは、またの機会に―

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